海上自衛隊の固定翼哨戒機「P3-C」は、現在、ソマリア沖海賊対処行動に派遣されており、海自搭乗員の誠実な働きぶりと相まってその有用性は国際的にも高く評価されている。

来年実戦配備される予定の次期固定翼哨戒機「P-1」

 もちろん、このP-3Cが我が国周辺における本来の海上防衛力としても重要な存在となっていることは言うまでもない。

 防衛省では、このP-3Cの耐用命数が近づき、減勢が始まることから後継機の研究開発を行っており、現在は開発の最終段階に当たる試験評価が行われている。

 後継機は、2機が試作機として製造され、「XP-1」と呼称されているが、平成23(2011)年度末に試験評価を終えた暁には「P-1」として第一線部隊に配備される予定となっている。

 本稿では、海自における固定翼対潜哨戒機の変遷、その中でも最もエポックメイキングなP-3C導入の経緯と意義、その後継機の国内開発の背景、そして最後に、次世代を背負うことになるP-1への期待と課題について述べてみたい。

1 海自固定翼対潜哨戒機の変遷

海上自衛隊の「S2F-1」(ウィキペディア

 本題に入る前に海自における固定翼対潜哨戒機の主力機の変遷について概観したい。

 海自における歴史は、米海軍から譲与された艦上機「TBM(アベンジャー)」に始まる。その後、「S2F-1」「PV-2」「P2V-7」「P-2J」「P-3C」へと進み、そして現在試験中のP-1へと変遷してきた。

 この中で、多発機(4発エンジン搭載)の嚆矢となったのがP2V-7であるが、海自の草創期の昭和30(1955)年から40(1965)年にかけて16機が米国から供与(貸与)され、その後、ライセンス国産された42機が各部隊に配備された。

 それに続くP-2Jは、このP2V-7をベースにして我が国で改造開発したもので昭和40(1965)年から53(1978)年にかけて83機が製造された。

 当初、P-2Jは国産による本格的な対潜哨戒機「PX-L」までのつなぎとして、60機程度が製造される計画であったが、PX-L計画が立ち消えになったため、後継機が取得されるまでの間、83機という多数の製造が続いた。