日本の奨学金には大きな誤解がある。(写真はイメージ)

 文部科学省が来年度から無利子奨学金を希望者全員に貸与する方針を固めたという。

 その趣旨は、学費が高すぎるので自己の生活費から出すのが困難な希望者には全員に援助をするために「無利子」の奨学金をあげることにしよう、というものである。

 ここで言う「奨学金」とは、お金を貸してあげるけど、後で返してね、無利子だから、利息はつかないのでその分は返済しなくていいよ、ということらしい。

 その他、いろいろな議論が出されている。例えば、

「怖い奨学金返済」
「奨学金で苦しまないために」
「<奨学金>保証人の家族ら困窮」
「奨学金の返済に困ったらどうすればよいか?」
「奨学金返済!生活困窮で多大な支障、滞納で給与差し押さえやローン組めず」

 などである。奨学金とはなんと困った厄介なものなのか。(独)日本学生支援機構(JASSO)によると、卒業後に返済を滞納している現状は、「3か月以上の滞納者は17万人に上り、898億円の返済が滞っている」のだそうだ。

「奨学金」の誤解

 現在の日本で、奨学金に関する問題や論争はほとんど不毛なものとなっている。その理由の1つに「奨学金」に対する誤解がある。本来、奨学金は借金ではない。しかし、上で見たような見出しから、それらは負債であることを押し隠している。

 奨学金という言葉の使われ初めは明治初期だと言われている。もちろん、もっと古い時期から、学生に対する学資金の援助はあった。明治初期の文部省は、資金的に困難な学生に「奨学金を援助」することを決めたとされている。

 1943年に、大日本育英会(現在の日本学生支援機構)は、「少額の奨学金を貸与する方針を採った」とある。

 実は、奨学金とは、英語では「scholarship」で、何らかの基準で優秀(の見込み)である学生、および優秀であるが経済的に困難な学生への補助金(つまり給付金)のことである。返済の義務などない、資金の移転である。

 現在の日本学生支援機構(JASSO)の「奨学金は貸与」しているだけで、利子がつくかつかないかにかかわらず、住宅ローンと同様に、あくまでも返済が前提の貸金なのである。

 正確に記述するなら、「学費ローン」と呼ぶべきであろう。英語では「student loan」と呼ばれている。

 奨学金(scholarship)は給付(grant)されるもので補助金である。学費ローンは貸与される、借金である。負債であり、債務なのである。

 補助金と債務を同列に扱うことはおかしいし、これらをはっきり区別することは、大事である。なぜなら、この点に関する不理解、無理解が現在の混乱の一大原因であると思われるからだ。

 大学進学率60%のこの時代に、明治から戦前の使われ方は全く合わなくなっている。