「トレジャリー・マネジメント」に関心を持つ企業が増えている。これに応えるためにさまざまなサービスも登場しているが、その中で、大手多国籍企業をはじめ600社以上から採用されているのが、米Reval社の財務・リスク管理(トレジャリー・リスク・マネジメント:TRM)ソリューションだ。
 同社の統合型クラウド・システムを導入することにより、資金情報の可視化はもとより、戦略的で付加価値を生む資金管理が実現するという。

 先進的物流施設のリーディングカンパニー、グローバル・ロジスティック・プロパティーズ(GLP)もそのうちの一社だ。

 同社CFOの堤一浩氏とReval社アジアパシフィック/ジャパン マネジングディレクターのトニー・シングルトン氏が、グローバル企業に求められるトレジャリー・マネジメントのあり方や、Reval社のクラウド型TRMシステムの活用法などについて話し合った。
 

グローバル化の進展にともない
グループ全体の資金の可視化が必須に

Reval Japanアジアパシフィック/ジャパン
マネジングディレクター
トニー・シングルトン


シングルトン 日本の企業を取り巻く環境が大きく変化しています。大手企業に限らず、海外への進出は当たり前になり、多くの企業で海外売上比率が高くなっています。
 海外での売上が増えると、さまざまな課題も生じます。たとえば、世界中で資金を持つことになりますが、複数の子会社にどれだけ資金があるのか把握することは容易ではありません。

 その点で、GLP社では早くから、資金の可視化に取り組んでいますね。

 はい。GLPは日本、中国、ブラジル、米国などで事業を行っています。保有している物流施設は2000カ所以上に達しています。
 それぞれの不動産には、現地にSPC(特定目的会社)を設立し、そこから投資を行うという形が一般的です。当然ながら、銀行口座についても、それぞれのSPCが各国で別々の口座を持っているわけです。これらについて、残高や資金の移動を把握することが当社のビジネスには不可欠です。

 早くから、透明性を担保しながら、タイムリーに資金の流れを可視化したいと考え、これまでも、さまざまな施策を進めてきました。Reval社のクラウド型TRMシステムの採用もその一環です。

シングルトン 日本企業でも、「トレジャリー・マネジメント」システムを活用し、グローバルなグループ全体の資金の流れを管理しようとする企業が増えています。

 ただし、現状はまだグループ会社の余剰資金の集約程度にとどまっているところが少なくありません。また、その導入の目的についても、間接業務の共有化やインハウスバンキング(グループ内銀行)などによるコスト節約が注目されがちです。

 もちろん、コスト節約も大切ですが、それ以上に重要なのは為替の変動など、企業を取り巻くさまざまなリスクに対応することです。

 株主がグローバル化していることから、国際財務報告基準(IFRS)を導入する日本企業も増えています。ステークホルダーに対して、運用実績について説明が求められるだけでなく、資金管理の方法についても、グローバル標準のリスク対応ができていなければ改善を要求されるでしょう。
 

グローバル・ロジスティック・プロパティーズ副社長執行役員 CFO(最高財務責任者)
グローバル・トレジャラー
堤 一浩

 まさにそのとおりです。企業の最高財務責任者(CFO)や財務部門のマネジメントにとって大切なのは、いかに高付加価値を提供するかという点です。
 高付加価値につながる業務とは、たとえば自社のファイナンスポリシーの策定や分析、リスク管理、シミュレーション、キャピタルマネジメント、M&Aにおけるディールなどです。

 ところが、実際には、日々の決済や仕分け、決算など、いわゆるオペレーション的な業務に追われがちです。リソースもこれらに割かざるを得ず、本当に価値を出せる仕事にかかることができないのです。

 当社では、Reval社のTRMシステムを導入することで、業務の効率が向上しただけでなく、財務部門のリソースを、付加価値を生む業務に振り分けることができるようになりました。
 実際の成果も出ています。具体的な数値で言えば、同システムを導入することによって、運転資金が約2.5億ドルも増加しました。

次回「なぜReval社のシステムが企業に貢献できたのか」に続く