6月7日、イスラエル中部の都市ネタニヤに「杉原千畝(すぎはら・ちうね)通り」が誕生した。杉原千畝は、第2次世界大戦当時、ナチスドイツの迫害から逃れた数千人のユダヤ人にビザを発給した日本人外交官である。
このように日本とも深い縁があるイスラエルだが、その実像は日本ではあまり知られていない。イスラエルに留学経験のある知人は「イスラエルを知れば世界が分かる」と言う。今回は、イスラエルとはどんな国なのかを整理してみよう。
イスラエルは四国程度の面積に約800万人が住む小国であるが、その現状を見ると「世界をリードするユダヤ人」「中東のシリコンバレー」「世界3大一神教の聖地(エルサレム)を持つ国」「地政学リスクの高い国」などのキーワードを見出すことができる。
世界をリードするユダヤ人
イスラエルは言わずと知れたユダヤ人を主体とした国家である。ユダヤ人の定義は様々だが、人種的な定義はなく、一般的には「ユダヤ教の信者」とする場合が多い。イスラエルの帰還法(ユダヤ人と認めイスラエルの国籍を与える法律)では、ユダヤ人とは「ユダヤ人の母親から生まれた人、ユダヤ教を信奉しまたはユダヤ教に改宗を認められた人」とされている。
ユダヤ教徒は全世界に約1400万人いるとされている。イスラエルに約600万人、米国にほぼ同数が居住しているとされ、この2カ国で全世界の8割以上を占めている。
イスラエルでは全人口の約75%がユダヤ人とされ、米国では全体の2%にも満たない。しかしユダヤ人の米国内での存在感は非常に高く、政治・経済・社会の全ての面で、米国を主導しているとも言われる。そのため、米国の対イスラエル政策は一貫して友好的であり、両国間の関係は緊密である。