当社で今進めているシステム開発プロジェクトで異変が起きた。なんと、導入途中のERPパッケージソフトに致命的なバグがあったのだ。固定資産を管理するモジュールなどは、ほとんどアルファ版(プログラム検証などをしていないもの)のような状態で、残高が合わないのである。
我々は十数年この仕事をしているが、販売されているパッケージ製品そのものがこんな不良品だとは思いもよらなかった。
このソフトを導入しようとしていたユーザー企業の社長は、「不良品をつかまされた」と当社に代替品を求めてきた。当社から見てもあまりにもひどいパッケージソフトであった。やむなく全額負担して、入れ替えることに合意した。
だが、もしも合意に達しなければどうなっていたのだろうか?
こんな出来事もある。ある会社にシステム開発を委託した。その会社は設計仕様とは違うシステムを納めてきた。変更を求めると、「仕様追加」だから追加の費用がかかるというのである。違うものを納品してきて、変更には追加費用がかかるとは、一体どういうことなのか。
こういうトラブルはIT業界では頻繁に起きているようで、先日、取引先のシステム会社の社長と話をしていたら、大阪の会社と係争中だという。周りを確認したら、意外と訴訟経験のある会社が多いので驚いた。
我々の会社は今まで裁判に関わった経験はない。それは、この世界では珍しいことなのかもしれない。
巨額な賠償請求の裁判が起きている
技術者にとってはほんのささいなプログラムミスが、場合によっては経営者が引責辞任させられるほどの大トラブルに発展することがある。
ネットなどで調べてみると、現在、係争中のものも含めて相当な件数の事例を閲覧できる。IT業界の最近の「大きな裁判」としては、以下のようなものがある。
(例1)ジェイコム株の誤発注で損失を被ったみずほ証券が、415億円の賠償を求めて、東京証券取引所を訴えた。誤発注を取り消せなかったのは、東証のシステムの不具合が原因であるという訴えであった。
2009年12月、東京地方裁判所は「東京証券取引所が提供するシステムが不完全だった」として、東京証券取引所に約107億円の支払いを命じた。