先月、尖閣諸島の我が国領海内で操業していたと思われる中国の漁船が、この海域の哨戒に当たっていた海上保安庁の巡視船に対し公務の執行を妨害し、この巡視船に衝突するという事件が起こった。
これは偶発的事件か?
その後の経緯については広く知られるとおりであるが、この事件の背景を見ると果たして偶発的な事件であったのか、はなはだ疑問である。
また、この度の事件を通じて中国が改めて尖閣諸島を領土問題化し、このことを国際社会に印象づけた事実も免れ得ない。
我が国は、今後の対応として国際社会に対して我が国の正当なる主張を訴え続け、関係国と協調して海の秩序維持に努めなければならないことは言うまでもない。
さらに我が国固有の領土、領域の保全に関わる重大な問題であることから、中国が南シナ海で行ってきた侵略の史実を見据え、これを防ぐため、領域の警備に関わる法整備を急ぐ必要がある。
1988年3月14日 南沙諸島の岩礁において無防備なベトナム兵士を重装備の中国海軍艦艇が攻撃し64人の命を奪った。現在同岩礁は中国の占領下にある。その生々しい映像「中国の犯罪行為の証拠(南沙諸島における殺戮)」が残されている。
この事件の背景にあるもの
1968年に実施された国連アジア極東経済委員会(ECAFE)による東シナ海大陸棚資源調査の結果、同大陸棚、特に尖閣諸島周辺海域の海底に石油資源が豊富に埋蔵されている可能性のあることが分かり、これを契機として、突如中国と台湾が尖閣諸島の領有権を主張し始めた。
以後、周辺海域での海洋調査船の活動が頻繁になった。
一方、日本政府は中国との「友好関係」を第一義的に考え、尖閣諸島の領有権を一時的に棚上げし、排他的経済水域(EEZ)の日中中間線付近での海底資源については共同開発の方向に甘んずるという消極的な姿勢に終始してきた。
その結果、東シナ海における日中中間線付近での中国の天然ガス田開発を許し、この問題でも我が国は後手、後手に回らざるを得ない状況にある。