経済のハードランディング懸念が和らいだ中国だが、今度は、政治のハードランディング懸念が生じつつある。きっかけは急に勢いがついた習近平国家主席に対する批判だ。
習近平は、毛沢民の絶対権力と鄧小平の改革開放思想を足して2で割ったリーダーだと極めて高く評価されてきた。
確かに新シルクロード構想や反腐敗運動は、経済発展のキャッチアップ段階を終え、「中進国の罠」の克服が最大の課題である中国にとって、正しい方向だ。
その決断と実行は、世界のどの政治家もまねができないものだと高く評価して良いだろう。ところが、風向きが変わりつつある。
3月の全人代では、檀上で後ろから習近平の肩をたたいて呼び止めるなど国家主席の権威をないがしろにする行動を王岐山がした。王岐山は、習近平とは幼少時代からの友人で、下放の経験を共有する盟友とされ、党中央規律検査委員会書記として反腐敗運動を陣頭指揮するトップ7の1人だ。
また、習近平が自らを「同志」ではなく毛沢東以来の「革新」と呼ばせようとした目論見は失敗した。更に、一部メディアに全人代開催期間中に出た習近平に辞任要求する論文、国営通信社が流した「中国の最後の指導者」が「最高指導者」の誤字だとする記事、など1年前ならあり得なかったことが現実に起きている。