3Dプリンターの本格的ブームはこれからやって来る?(図版はイメージ)

「3Dプリンターブームって終わったんですよね?」

 いいえ、まだ始まってないんですよ。私としてはまだ始まったとは思っていないんです。

 私は兵庫県芦屋市でフリーランス工業デザイナーをしています。みなさんの身の回りにある工業製品(電気で動くモノが多いです)をデザインし、設計する仕事です。

 一昨年あたりから個人で使える低価格の3Dプリンターが数多く登場し、一躍世界的なブームとなりました。早くもブームは終了したなんて声も聞かれるわけですが、3Dプリンターの実力と可能性が十分に理解され、活用されているとはまだまだ言えないようです。

 私自身、3Dプリンターをデザインの仕事で使ってみて初めて分かったことがいっぱいあります。一体どんなことが分かったのか、そして、なぜ3Dプリンターのブームはこれからだと思っているのかを、お話ししたいと思います(以下、長文ですが、なにとぞ最後までお付き合いください)。

15年前の3Dプリンター事情

 まず、私と3Dプリンターの馴れ初めから。3Dプリンターは、あちこちで語られるよりもかなり前(15年ぐいらい前)から使っていました。ただし、当時は「3Dプリンター」なんてカジュアルな呼ばれ方ではなく「ラピッドプロトタイピング装置」と呼ばれていました。

 従来、工業製品のプロトタイプ(試作品)を作る際は「切削加工」と言って大きな工作機械で樹脂を削り出す方法が一般的でした。それに対して、樹脂を削るのではなく、樹脂の層を積み重ねて立体を作る方法が登場しました。それがラピッドプロトタイピング装置です。