那覇地検は、9月7日の海上保安庁巡視船との衝突事件で拘束していた中国人船長を24日、急遽釈放した。船長逮捕以降、中国政府は即時無条件釈放を求め、ヒステリックなまでに次々と報復カードを切ってきた。
実に情けない! ベタ下りの日本外交
日本大使に対する非礼な深夜の呼び出し、官製と思われるデモ、閣僚級交流停止、ガス田開発交渉延期、スポーツや旅行など民間交流停止、レアアースの輸出停止、挙句の果てには日本のゼネコン社員を軍事施設撮影容疑で拘束するに至った。
日本政府は当初、法的手続きに従い粛々と対応するとしていたが、ここに至って脅しに屈し、腰砕けの格好だ。まさにマージャンでいう「ベタ下り」である。
那覇地検が総合的に判断し船長釈放を決定したのであって、政府はこの決定を了としただけだと、政府はメンツを保つために責任回避に躍起であるが、誰も信じていない。政府の狼狽ぶりは見苦しい限りである。
中国は日本の決定に対し、これまでの日本の「司法プロセスは、すべて違法で無効だ」とし、謝罪と賠償を要求するとさらに追い打ちをかけている。
強硬措置で脅せば日本は原則を曲げてでも必ず下りるとの確信を中国に与えてしまったことは、今後の日中外交に大きな禍根を残した。
ポーランド侵攻を誘引したチェンバレンの宥和政策
中国との領有権問題を抱える東南アジア諸国も、日本の対応には失望したであろう。日本は法治国家としての矜持の欠片もなく、およそ主権を死守するという気概もないという印象を全世界に与えたことも大きな痛手だ。
今後、尖閣にとどまらず、沖ノ鳥島など日本周辺海域において、中国海軍の無頼漢的傾向に拍車をかけることは間違いない。チェンバレンの宥和政策がヒトラーのポーランド侵攻の誘因となったように、このつけは大きく日本に跳ね返ってくるはずだ。
そもそも今回の強硬な中国の態度に隠されたものは何であったのか。中国の真の意図が理解できない限り、今回のような戦略なき「その場しのぎ」の対応にならざるを得ない。
今回の事件は決して偶発事案ではない。南シナ海での中国の動きと見比べてみると、中国の深謀遠慮が見えてくる。実は典型的な中国の領有権獲得パターンの1フェーズなのである。