今や、「IS」(イスラム国)の名を聞いたことがない日本人はもうほとんどいないのではないか。2014年6月に一方的な建国宣言を行い、2015年1月には日本人男性2名を殺害したことで、日本でも一気に広く知られるようになった。
今年はISやテロに関する書籍も多く出版された。しかし、長年国際テロ問題を学術的な観点から研究した筆者から見ると、昨今の国内でのIS報道には、疑問を感じざるをえない。
それは、「広大な領域を支配する」「アルカイダを凌いでいる」「多くの外国人戦闘員が参加している」など、ISの“脅威”ばかりを強調しすぎているのではないかと思われる点だ。
日本の専門家の見解やメディアの報道は決して間違ってはいない。しかし今日の世界の先端のテロ研究においては、「長期的にはISよりアルカイダが勝る」「シリアに流入する外国人全てが戦闘員ではない」ということを前提として議論されている。それに対して、日本では、ISの実態を冷静かつ本質的に論じる分析がまだまだ少ない。
シリア、イラクへ渡る者は全員が戦闘員なのか?
そもそもISは今の状態を長く持続できるのだろうか。
ISには世界の約100カ国から約3万人の外国人が参加しているとされる。だが、文化や言葉が異なる者たちが、現地住民とも協力しながらうまくやっていけるのか。また、その3万人からなる組織を幹部が問題なくコントロールできるのかなど、大いに疑問である。