ソウル市内のロッテホテル。このビルの34階にロッテ創業者の重光武雄(辛格浩=シン・ギョクホ)氏が住居兼執務室を構えている

 いったんは終わったかにも見えたロッテグループのオーナー家の紛争に再び火がついた。今度も仕掛けたのは、創業者の長男だ。韓国で頻繁にメディアに登場し、法廷での争いも始めた。90歳を超えた創業者である重光武雄(辛格浩=シン・ギョクホ、1921年生)総括会長もメディアの前で初めて口を開いた。

 2015年10月27日午前。ソウル中央地方裁判所で、ロッテグループの経営権を巡る審理が始まった。

 ロッテ創業者の長男である重光宏之(辛東主=シン・トンジュ、1954年生)氏が、韓国で百貨店を運営するロッテショッピングを相手に帳簿の閲覧などを求めて起こした仮処分申請についての審理だ。

日本と韓国で相次ぎ提訴

 宏之氏は10月8日にソウルで会見し、日本と韓国で相次いで訴訟を起こしたことを明らかにしていた。

 1つは、創業者である武雄氏が日本のロッテホールディングスの代表取締役会長から解任されたことを不当だとして無効訴訟を日本で起こした。もう1つは、宏之氏が韓国のホテルロッテ、ロッテホテル釜山の理事(取締役に相当)から解任されたことに対して損害賠償訴訟を韓国で起こした。

 さらに武雄氏と宏之氏が、ロッテショッピングの帳簿閲覧を求めた仮処分を申請していた。3つの中で仮処分申請の審理が最も早く始まったのだ。

 何のための仮処分申請なのか。宏之氏は、実弟である重光昭夫(辛東彬=シン・トンビン、1955年生)氏とロッテグループの後継者を巡って争っている。この過程で、昭夫氏が主導した流通事業の中国事業で巨額の赤字を出していると主張していた。これを裏付けるために帳簿の閲覧を申請したのだ。

 昭夫氏が中国事業で赤字を出したことがどうして宏之氏に関係があるのか。宏之氏側は、「昭夫氏は創業者で総括会長である武雄氏に中国事業で巨額の赤字を出していることを報告せずに独断で事業を進めた」と主張している。

 「昭夫氏はけしからん」ということを父親に吹き込み、宏之氏の側に引き込もうという狙いのようだ。

 昭夫氏側は、「赤字額は宏之氏が主張するような額ではない。中国事業についてはもちろん、総括会長に詳細に説明してきた」と真っ向から反論している。