9月17日、菅改造内閣が発足した。キーパーソンである仙谷由人官房長官、野田佳彦財務相が留任したため、白川方明総裁が率いる日銀の金融政策運営方針に理解を示してきた菅内閣の姿勢に、抜本的な変化は出てこないと見込まれる。ただし、この内閣改造およびそれに関連して出てきた動きの中で、筆者が気になっているものが2つある。

 第1は、経済財政担当相に就任した海江田万里氏の発言である。

 海江田氏は9月18日未明に行われた就任記者会見の中で、菅直人首相から「経済の司令塔」として日本経済を立ち直らせてほしいとの指示を受けたことを明らかにし、「日本経済の活性化、とりわけ1日も早くデフレを克服し、そして経済の自律的な回復に向け粉骨砕身努力したい」と抱負を述べた。民主党代表選で海江田氏も支持した小沢一郎元幹事長が導入を主張した無利子国債については、その導入を検討すべきと発言。国有財産の証券化についても、前向きな考えを口にした。さらに、デフレ脱却問題について、「政府・日銀の息は合ってきたが、さらに踏み込んで、日銀法改正などを検討していいのでは」と述べた。「インフレ目標」導入のための法整備を念頭に置いた発言とみられる、と報じられている(9月18日 毎日夕刊)。9月14日に行われた民主党代表選の国会議員による投票直前に小沢氏が行った演説の中で、「日銀法改正やインフレ目標も視野にあらゆる手段を尽くす」と述べたことと重なってくる。さらに、「国債買い取りの限度を日銀券発行の範囲内に収める内部ルールも(変更を含め)検討されていいのではないか」と、海江田経済財政相は述べた(9月18日 時事)。

 海江田氏が大臣室を有することになる内閣府は、財務省とともに、日銀金融政策決定会合に出席者を送り込んでいる官庁である。むろん、政府としての対日銀姿勢は、大枠としては内閣府と財務省との間で、事前にすり合わせが行われているものと考えられる。だが、海江田経済財政相の登場によって、政府の対日銀姿勢に微妙なスタンスの変化が出てくることにならないか、これまで以上に注視が必要になったことだけは間違いない。菅改造内閣が野党との部分連合を模索しているだけに、政党間の駆け引きとの絡みもあるわけで、注意していく必要があるテーマである。

 第2は、米大手格付会社の幹部によるこのところの発言である。日銀が国債買い入れ額を上積みしても日本国債の格付けにはネガティブな要素にならないことを示唆する発言が相次いでいる。