個人のライフスタイルを変革したスマートフォンやタブレット端末は、今やビジネスの現場でも当然のように活用される存在となってきた。企業におけるモバイル端末の利用は果たしてどこまで進んでいるのか、また今後どのような形で活用されるようになっていくのか。JBpressが2015年7月に読者に対して実施した「企業のモバイル活用に関するアンケート」の回答を踏まえ、企業におけるモバイル端末活用の潮流を考察した前回に続き、今回は、業務におけるモバイル活用がもたらすビジネス価値と開発の要点について考える。

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モバイルアプリによる生産性向上や売上貢献への
期待は高いが、開発・運用面での課題も。

 ユーザーがモバイル業務アプリに求めるものは具体的に何なのか。「モバイルアプリを導入する目的は何ですか(複数回答可)」との設問に対し、「社内情報への簡便なアクセス」「社内コミュニケーション、コラボレーションの向上」「日報や週報など報告業務の効率化」「お客様やパートナーとの商談の効率化」といった回答が上位となった。総じて、日々の業務における効率を向上させスピードアップを図りたい、といった回答と言えるだろう。

 また、モバイルアプリ導入の際に取り組むべき課題についての設問では、「業務の生産性向上」「モバイル端末の紛失などに対するセキュリティ対策」を挙げる回答が多かった。これらに続くのが、「売上への貢献」「モバイルアプリの使い勝手や操作性の向上」「モバイルアプリと企業システム内のデータとの連携」だ。

 「業務の生産性の向上」「売上への貢献」は業務部門の課題であり、前回みてきたようにモバイル端末の利用の多くが業務部門である以上、ある意味当然の回答だと言えるだろう。一方、「セキュリティ対策」「企業システムとの連携」「開発・管理の煩雑さの解消」「モバイルならではの使い勝手や操作性」「継続的な保守と改善」などはIT部門の課題と言える。こうした業務部門とIT部門の双方が抱える“ハードル”を双方の部門の連携によってどのように超えるかが、モバイルアプリ導入の成否を決めるカギになっていると推察できる。

接客の質を大幅に高める小売業でのモバイルアプリ利用例

 多くのユーザーがモバイル業務アプリに、日々の業務における効率を向上させ、企業の生産性向上、売上に貢献することを期待している。

 中でも特に効果を発揮すると考えられるのは、基幹系業務システムと連携したモバイル業務アプリだ。業務アプリには、業務そのものに即した数々の機能がある。そうした機能群を、モバイル端末ならではの操作性を備えたアプリを通じて、これまでPCを使えなかったような、例えば小売業、建設業、巡回によるメンテナンス業務などの現場で利用すれば、大きな価値を発揮するはずだ。

 一つの例として、在庫管理システムと連携した小売業の接客業務を考えてみよう。

 店頭での接客業務においては、顧客の求める商品の在庫をオンラインで確認できるようなモバイル業務アプリが効果を発揮する。顧客から在庫確認を求められた際、バックヤードの業務PCまで走って確認するような手間や時間のロスをなくすことができ、業務効率を向上させる。在庫の確認中に顧客を見失うこともなくなり、また顧客を待たせることなくスピーディーに返答できるため、顧客満足度向上にもつながる。

 モバイル業務アプリを基幹系業務システムと深く連携させることで、店舗内外の在庫をカバーし、店外にある在庫を手許の操作で出荷依頼する、といった機能も実装することが可能となり、売り逃しと過剰在庫を防止できるようになる。また店舗内の棚割を把握できるようにすれば、顧客誘導も正確に行えるようになる。さらに、ポイントカードシステムなど顧客管理の仕組みと連携させれば、顧客の購入履歴などを元に積極的な商品提案も可能になってくる。

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モバイルアプリが基幹系業務システムにつながるメリット

 上記のように、モバイルアプリが基幹系業務システムと連携することで、大きな効果が生まれてくる。ここで、そのメリットを整理しておこう。

○より簡便に社内情報にアクセスできる
これはアンケートの回答でも、最も多かった回答だ。オフィスでの業務とは違い、現場での業務はPCが目の前にないことが多い。モバイル端末なら携帯性が高く、常に持ち歩いていても現場の業務の邪魔になりにくい上に、即座にアプリを起動することができる。モバイルならでは操作性を実装することで、PCの操作に慣れていないスタッフでも容易に操作できる。

○基幹系業務システムにダイレクトに入力できる
逆に基幹系業務システムへの入力も、モバイルアプリからダイレクトに行えるようにすれば、業務効率を大きく向上させることができる。例えば、週報や報告書などをモバイル端末からCRM/SFAに直接入力できるようにすれば、業務の現場からスピーディーに報告が上がり、それに対する指示もタイムリーに行えるようになる。前回記事で触れた製造業のユースケースのように、生産現場や保守サービスといった現場からダイレクトに報告できるモバイル端末のメリットは大きい。

○必要な情報だけを取り出し、セキュアに表示できる
モバイルアプリでは、情報管理も様々なセキュリティ・レベルで行うことが可能だ。モバイル端末は、PCに比べると総じてアプリケーション間の分離が高度に行われている。そのため、例えば業務アプリ内で扱うデータを他のアプリから利用できないよう保護することも難しくない。さらに、高度なセキュリティが必要な場面では端末内に全く情報を残さないようアプリを設計することもできる。

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モバイル業務アプリ開発は、“難しい”という大きな誤解

 これまでPCが使えなかった現場や業務で、モバイル端末に実装したモバイル業務アプリを使うことができれば、これまで見てきたように多くのメリットが得られる。しかし現状は、そこまでモバイルアプリを活用している企業は多くない。

 その背景には、モバイル業務アプリ開発に対する“誤解”があると考えられる。アンケートの回答にもでてきた、「セキュリティ」「モバイルならではの使い勝手や操作性」「企業システムとの連携」「開発・管理の煩雑さの解消」「継続的な保守と改善」などといったことだ。

 しかし、それらはもはや、ハードルでは、なくなりつつある。近年、モバイル業務アプリを開発するための基盤(プラットフォーム)が充実してきており、それによってこうしたハードルをたやすく超えられるようになってきている。例えば、IBMが提供する「IBM MobileFirst Platform(以下、MobileFirst Platform)」がそれだ。

 MobileFirst Platformは、効率的なモバイルアプリの開発・保守・運用を通じて、信頼できるモバイル環境を提供するエンタープライズ・モバイル・アプリの開発管理基盤だ。Webアプリ開発の際にWebアプリケーションサーバーが必須であるように、モバイル業務アプリ開発の際にこうした基盤を使うことで、開発者はフロントエンドの開発に集中できるようになり負担を大幅に軽減できるとともに、モバイルアプリのライフサイクル全般を通じたトータルコストを抑制することができる。

 MobileFirst Platformには、オープンなインターフェースが提供されており、既存のインフラ内のリソースにアプリを接続することが容易にできる。複数のモバイルOSに対応するアプリケーションのハイブリッド開発によりマルチプラットフォームでの開発時間を短縮することが可能だ。ある企業では、5つのプラットフォーム向けにモバイルアプリを開発する際、開発コストを60%削減できたというデータもある。

 また、モバイル業務アプリは、リリースしてそれで終わりではない。OSのバージョンアップも頻繁に行われるし、機能の継続的な改善を繰り返すことが、アプリ品質を向上し、業務アプリの利用者を増やし、ユーザー体験を向上することにつながるからだ。こうした「継続的な改善」のほかにも、アプリの脆弱性を早期に発見して対応する、ビーコンを検知してお客様一人ひとりにあったサービスを提供する、NoSQLデータベースを使ってオフラインに対応したアプリを開発するためにも、MobileFirst Platformは有効な基盤となる。

 モバイル端末を業務で利用するのは当たり前になっている今、次のステップとして、自社専用のモバイル業務アプリを採用することが、企業競争力を高める近道となる。そうした企業にとってMobileFirst Platformは、大きな力となるに違いない。

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