ヤンゴン工科大で開かれた土木セミナーで講演するオリエンタルコンサルタンツグローバルの藤吉昭彦さん

タイ人技術者との連携

 建設ラッシュに沸くヤンゴンの市街地や世界の注目を集める経済特区の開発など、急速な開発が進むミャンマー。日本政府も、国道や鉄道など、特に運輸交通分野の基幹インフラの整備を積極的に支援している。

 その目玉事業の1つが、ヤンゴン~マンダレーを結ぶ約620kmの幹線鉄道の近代化だ。

 ミャンマー全土を対象に交通モード別に将来的な需要を算出した上で、今後整備すべきインフラについて優先順位付けが行われたマスタープラン調査と、その中で実施されたフィージビリティー・スタディー(F/S)を受け継ぐ形で、昨年8月より詳細設計(以下、YMDD)が進められている。

 梁や線路、地質、電気、車両、信号などの専門家ら約60人から成るこのYMDD調査団に、隣国タイからもエンジニアが参加していることをご存知だろうか。駅舎の建屋や橋梁など、設計業務の一部を再委託されたタイのコンサルティング企業、Asian Engineering Consultants Corporation(AEC)の技術者だ。

 一般的に、インフラ事業の調査時に、業務の一部を相手国の企業に発注すること自体は、決して珍しいことではない。

 特に今回のYMDD調査は、フェーズ1区間(ヤンゴン~タウングー間)だけでも約270kmにわたる大規模なものであり、時間の制約がある中、日本人技術者だけで正確に遂行すの地質確認については、321地点におけるボーリング調査が地元企業2社に再委託された(第9回参照)。

 では、橋梁の設計については、なぜ地元企業ではなく、わざわざタイ企業に協力を呼び掛けたのか。

 その理由は、ミャンマー国内における土木人材の層の薄さにほかならない。調査団の副総括として土木チームを率いるオリエンタルコンサルタンツグローバルの藤吉昭彦さんは、「フェーズ1の区間上では、全部で236本の橋梁の架け替えが予定されているが、この設計を任せられる設計コンサルタントは、残念ながらミャンマー国内にいない」と指摘する。

 この国では、長年にわたる軍政時代、ミャンマー国鉄(MR)が自ら設計図面を引き、コントラクターに施工させる形で整備が進められてきたという。つまり、MRは事業の発注者であると同時に、設計業務を行うデザイナーでもあったのだ。

 しかし、それがゆえに、この国では、今日まで設計コンサルタントが育つ土壌が醸成されなかった。今回、タイでパープルラインなどの経験を持つAECに協力を仰ぐことにした背景には、そんな事情がある。