2009年2月に火災が起きた直後のCCTV新社屋(右)と全焼した中央電視台電視文化センター(通称シロアリの巣)(Wikipediaより

 中国が直面する経済的な試練を表すのに、中国国営中央テレビ(CCTV)の新社屋として設計された未来的な名建築物以上にぴったりの象徴はない。2009年にこの象徴的なビルが完成する数カ月前、CCTV幹部らは許可を受けていない花火の打ち上げを行い、火災が発生。北京の住民たちが「シロアリの巣」というあだ名をつけた、複雑なくさび形高層ビルに付随する比較的小さい建物がほび全焼した。

 火災のために、CCTV本社の完成は2012年にずれ込むことになった。シロアリの巣はまだ未完成で、入居者もいない。

 ビルの構造的完全性が火災で破壊されてしまい、隣接する大きいビルを損なう恐れから、解体することもできない。構造物の良い部分は、悪分の負担を払いのけることができないのだ。

二重の軌道を描く中国経済

 この2つのビルは、二重の軌道を描く中国経済を彷彿させる。サービスと消費に基づく新しい軌道が、鉄鋼や鉱業など、非効率で余剰生産能力に苦しむ産業で構成される、古くて遅い軌道に足を引っ張られているのだ。

 2つの軌道をまたぐのが、中小規模の都市での膨大な過剰設備と大都市での堅調な需要を特徴とする中国の不動産市場だ。

 問題を悪化させているのが、高い成長目標――現時点で7%――に固執する中国指導部の姿勢と、その結果、必要不可欠な生産を生み出すために融資に依存する状況だ。信用制度は暗黙の政府保証を軸に設計されているため、融資の大半は中国経済のうち、比較的非効率で多額の債務を抱えたセクターに不適切に配分される。

 その結果、中国の成長の奇跡の基盤が、減退する兆しがほとんど見えない過剰債務によって蝕まれている。