米国・前太平洋軍司令官のティモシー・キーティングが、2008年3月11日に開かれた米上院軍事委員会である証言をしたことがマスコミを賑わし、世間に驚きを与えた。(敬称略)

太平洋のハワイより東を米国、西は中国で分け合おう

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ティモシー・キーティング前太平洋司令長官〔AFPBB News

 2007年5月の訪中時に中国のさる高官から「ハワイを基点に太平洋を東西に分け、米中で分割管理しよう」と提案されたことを明かしたからである。

 前司令官のキーティングは、中国高官の話を冗談と受け止めつつも、「中国が自国の影響下に置く地域の拡大を望んでいるのは明らかだ」としている。

 それから3年経った今、中国の狙いは現実味を帯び始めている。

 米国防総省は2010年の「4年ごとの国防計画見直し2010QDR」で、「統合エアシーバトル構想(Joint Air-Sea Battle concept)」を開発すると発表した。これは、急激に軍事力を強化し西太平洋支配を目論む中国を牽制する、新たな軍事戦略である。

 現在の中国が繁栄し軍事拡大路線を敷くとともに、混乱し将来どうなるか分からないので、今こそ軍事的な対処をしなければならないとの国防総省の考えが背景に存在する。

今、なぜエアシーバトル(空海戦)なのか

 現在、戦略の具体化段階で詳細も定かでないが、公式発言や信頼性の高い資料を基に分析すれば、かなりインパクトのある戦略で、日本に対する影響も極めて大きいようだ。

 あたかも、7月下旬に行われた日本海での米韓合同演習やこれに対抗して行われた中国軍による黄海での大規模演習、および間もなく黄海で行われる予定の米韓合同演習は、その前哨戦さながらである。

 構想の具体化を進めているのは、89歳になっても国防総省で現役を続けるアンドリュー・マーシャル率いる国防総省ネット評価室や統合参謀本部および海・空軍である。

 細部は明らかでないが、マーシャルの部下であったクレピネビッチほか多くの専門家が執筆した「何故海空戦か?(Why AirSea Battle?)」「海空戦;出発点(AirSea Battle; A Point of Departure)」などの報告資料が出されているので、ある程度推測できる。