2015年4月にスタートした「機能性表示食品」制度。この連載では、制度や表示に頼らない“本当に売れる”リアルなマーケティング手法について、ヘルスケア領域を中心に考えていく。

 これまで3回にわたり、「なぜ機能性表示食品制度で売ろうとするのが間違いなのか?」について説明してきた。

 繰り返し述べてきたように、食品は医薬品とは異なり、薬事法の規制で病気の治療効果等を表示することは許されていない。そのため、新しい制度で製品パッケージや広告に多少の効果効能が言えるようになった位では爆発的に売上が伸びるとは考えづらい。

 まして、機能性表示食品制度の大きな問題点の1つである「排他性のなさ」から、自社にしか表現できない効能の開発ができない。

 そんな状況で新しい市場を創るためには、消費者インサイトにもとづいた効果効能を伝えられる新しいエビデンスの開発と、それに沿った独自性のあるストーリーやコンテンツが必要だ。そして制度にとらわれずに、専門家やメディアを通じてストーリーを発信していくことが非常に重要かつ有効である。

成長が止まっていた食物繊維製品カテゴリー

 私が素材メーカーのマーケティング担当者時代に手掛けた食物繊維の事例を紹介しよう。まさにストーリーの力によって新しい市場を創造することに成功した商品である。

 食物繊維入り食品は、日本における機能性食品の先駆けであり、1980年代後半から90年代初頭にかけて一世を風靡した。そうした中、「お腹の調子を整える」という表示が許された特定保健用食品(トクホ)として、食物繊維配合をコンセプトとした飲料「ファイブミニ」が1988年に大塚製薬から発売された。毎日の食生活で不足しがちな食物繊維を手軽に摂れる製品として、女性を中心に大ヒットした。