前々回のコラムでは、中国の軍事力に関する米国防総省の対議会報告の注目点について書いた。その際、字数の都合でご紹介できなかったのが人民解放軍の「新たな歴史的使命」に関する部分である。今回は米国も注目するこの重要な概念について、詳しくご説明しよう。

米国防総省が注目する新概念

中国人民解放軍、外国メディアに基地内を公開

訓練する人民解放軍の兵士たち〔AFPBB News

 The New Historic Missionsなる見出しで始まる部分(本文p18-19)は1ページほどの短い記述だ。

 事前記者ブリーフでは国防総省幹部が今年の報告書の「4つの新機軸」の筆頭に挙げていたが、なぜか内外主要メディアは報じていない。

 その概要は以下の通りだ。

●2004年に中国指導部は、「新世紀の新たな段階における人民解放軍の歴史的使命(原文:新世紀新段階我軍歴史使命)」と題する軍の基本任務を定めた

●新たな「使命」とは、中国指導部が国際安全保障環境を再評価し、中国の国家安全保障の定義を拡大する上での調整を行うものであり、

●その目的は、共産党統治を強化し、国家発展の戦略的機会と国家利益を守るための「力による保障」を提供し、中国が世界平和に重要な役割を果たすことである

●新たな「使命」は、中国の安全保障環境の変化、国家発展の優先順位、共産党の目的に沿った人民解放軍の任務再編を念頭に置いたものであり、

●中国の指導者は、国家発展のために国防力と経済成長との調整を図るとともに、領土的境界を越えた戦略的利益を確保するため、解放軍がより大きな役割を果たすよう求めている