「ハマスが3少年を誘拐」とイスラエル首相、一夜で80人逮捕

3月17日の総選挙でリクードを勝利に導き、再選を決めたベンヤミン・ネタニヤフ首相〔AFPBB News

 ベンヤミン・ネタニヤフ氏は恐らく、イスラエル史上最も資質を欠く首相だ。同氏の失態や悪行は、9年間の首相在任中に嫌というほど露呈した。再選を目指す直近の選挙運動に乗り出した時には、ネタニヤフ氏の支持者や選挙区民でさえ、同氏の自己中心的な態度や、公の場でのネタニヤフ夫人の恥ずべき振る舞いに対する嫌悪を隠すことができなかった。

 ネタニヤフ氏の不快な個性を別にしても、イスラエルは同氏の統治下で、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最も格差の大きい国の1つとしての地位を固めた。

 イスラエル史上最も狂信的な新自由主義の指導者であるネタニヤフ氏は、同国の貧しい中産階級と貧困層に対し、高い生活費、手の届かない住宅、そして21%の貧困率という実績に基づいて自分を再選してくれるよう求めた。にもかかわらず、彼らは本当にネタニヤフ氏を再選した。

 また、ネタニヤフ氏は同氏の再選が有益だと言ってくれるまともな安全保障の専門家を1人も見つけることができなかった。約180人の将官と戦争の英雄――一番の有力者は、イスラエル諜報特務庁モサドの歴代長官の中で特に尊敬されているメイール・ダガン氏――が一致団結し、彼らがイスラエルの安全保障に対する脅威と呼ぶ男の再選に反対した。

 しかし、何も安全保障分野の象徴的人物でなくても、ネタニヤフ氏がイスラエルと国際社会を結ぶ橋、特にイスラエルにとって一番欠かせない同盟国であり、後援者である米国との架け橋を焼き払ったことは分かる。

敵に囲まれた小国が抱く恐怖心

 ネタニヤフ氏は、バラク・オバマ米大統領と敵対する米共和党と手を組むことで、大統領とイランの核交渉を公然と妨害しようとしただけではない。選挙の2日前には、中東和平実現に向けた国際社会のビジョンの礎石である二国家共存に対するコミットメントを突如取り消した。

 こうした状況を考えると、なぜイスラエルの有権者はネタニヤフ氏に首相として連続3期目の任期というご褒美を与えたのか(実際、1996年の最初の当選以来、最大の差をつけての勝利を与えたのか)?

 かなり単純な話、イスラエル国民の大多数はある根本的な点においてネタニヤフ氏と同意している。

 破綻しかけている国家とハマスやヒズボラ、今ではイスラム国(IS)のような凶悪な非国家組織が集まる混沌とした地域にあって、敵に囲まれている小国は、あたかも平和な西欧の公国かのように社会経済的な政策綱領で選挙を実施する余裕はない、ということだ。