「真意はどこに?」「標的はどこか?」――。韓国政府が、突然、腐敗撲滅に乗り出し、産業界は震撼している。捜査の矛先はまず、ポスコに向かっているが、どう拡大していくのか。行方はまったく不透明だ。

 2015年3月12日、前月に就任したばかりの李完九(イ・ワング=1950年生)首相が、緊急記者会見を開いた。

 「何事か?!」。ほとんどの韓国メディアの記者にとっても、まったく寝耳に水の会見だった。

なぜ今の時期に? 緊急会見のタイミングに憶測

 「政府はあらゆる力、権限、手段を総動員してでも構造的腐敗の連鎖を果敢に断ち切る」。李完九首相の緊急会見の中身は「腐敗撲滅宣言」だった。

 もちろん、その趣旨に反対する声はない。このところ、防衛産業を巡る汚職などが相次いで発覚していることもあり、首相が、「綱紀粛正」に乗り出すということは、国民の間でも一定の支持を得ることは間違いない。

 朴槿恵(パク・クネ=1952年生)大統領は就任以来、「非正常の正常化」という言葉を使って、韓国社会に根強く乗る「腐敗」「悪弊」を断ち切る決意を繰り返し表明してきた。

 就任したばかりの李完九首相がこうした「基本路線」を踏襲することは不思議ではない。

 それにしても、「腐敗撲滅」は、捜査当局が常時、手がけなければならない問題で、なぜ今の時期に首相が緊急会見まで開いたのか。

 会見を機に、政官界、産業界、メディアの間でさまざまな憶測が乱れ飛んだ。

 首相の意図するところは何なのか。「標的」があるのか。

 首相会見翌日の13日、ソウル中央地方検察は、ポスコ子会社であるポスコ建設本社に強制捜査に入った。あたかも示し合わせたかのような電光石火劇だった。

 韓国メディアによると、ポスコ建設は2009年から2012年の間、ベトナムでの事業を手がける過程で巨額の不法資金を作った容疑があるという。その金額は当初100億ウォン(1円=9ウォン)相当と見られていたが、韓国メディアが報じる額は次第に増えている。