2014年9月、メキシコのゲレロ州で、43人の学生が行方不明になる事件があった。翌月、焼かれた遺体が大量に発見されたが、これが拉致された学生の物かどうかは、いまだに確認されていない。とはいえ、今では、彼ら全員が殺されたことは間違いないと思われている。

 このゲレロ州というのは、治安の悪いメキシコの中でも最も悪名の高い州で、政治家と警察と犯罪組織が一体化してしまっているらしい。事件後、大勢の警官が拘束されたが、肝心要の市長と警察署長は姿を晦ましたままだ。おそらく、どこかに潜んでほとぼりの冷めるのを待っているのだろう。

 メキシコ市の治安問題専門家によれば、「ゲレロ州には麻薬、ゲリラ、社会的葛藤、それに政治ボスがない交ぜになったものがある」という(ロイターより)。大変物騒なところだ。

秘密裏に行われる武器輸出の許可

 さて、今年2月になって、この警官とギャングの複合体が、学生の虐殺に使った自動小銃の一部、あるいは大半が、ドイツ製であったことが明らかになった。正確にはG-36という自動小銃だそうだ。ドイツ陸軍用に開発された銃で、歩兵部隊の標準装備品だが、今では世界の30カ国で使われているという。

 また、シリア北部でクルド人に向けて発射されているミサイルも、発煙筒を調べてみたら、昔、ドイツとフランスの合弁会社で作った対戦車ミサイルであったという。フランスが合法でシリアに売った物が、IS(「イスラム国」)の手に渡ったと見られている。

 武器の輸出は、たいていの国では、政府の許可がないとできない仕組みになっている。ドイツの場合、輸出を許可するかどうかを決めるのは、内閣のメンバーで構成された連邦安全保障委員会というところで、会議は秘密裏に開かれ、時期も内容も一切公表する義務はない。

 つまり、議会の承認も必要としない。一年以上たってから、「どこに何を売りました」という軍備報告書を提出すればおしまい。