2014年最後の1カ月、スウェーデン政界は大激震だった。

 9月に4年ぶりの総選挙を終え、8年間政権に就いていた中道右派から中道左派と緑連合に政権が交代したばかりだが、12月3日に予算案を巡ってステファン・ロベーン新首相が辞任すると宣言して議会が解散することになり、来春再び総選挙が行われるかという状況だった。

12月5日付全国紙DN 「スウェーデンにとって、どの形態の政府がベストだと思いますか」との問いに、「(社会民主党と環境党の連立政権である)現政府」と答えた人はわずか2%*1

 が、すったもんだの挙句、27日になって「来年の新選挙は行わない」と議会で発表され、スウェーデン政界はとりあえずの平穏を取り戻したようだ。

 しかし、もし選挙が行われていたとしたら――。首相が「解散」を宣言した直後に発表された政党支持率の世論調査では、野党同盟への支持が現連立政権を上回るという結果が出た*2

 つまり、3月に総選挙が実施されていた場合、再び中道右派に政権の座が移行していた可能性が大いにあったということだ。

予算案折衝が決裂、あわや解散総選挙

 この数週間の顛末を簡単にまとめておこう。12月3日に予算案を決定する議会投票が行われることになっていた。スウェーデンの予算案は、政権と野党の両方がそれぞれの案を提出し、これに議員が投票して決定することになっている。

 これに際し、社会民主党・環境党からなる連合政権が作成した案と、これに対抗する案が野党4党同盟から、さらにどちらの陣営にも属さないスウェーデン民主党からの案が議会に提出された。

 が、国家主義・反移民を党是とするスウェーデン民主党の案は早々に却下され、2大陣営による2案が投票にかけられることになった。

 通常は慣例的に、政権案が承認される。なのだが、投票日の前日にスウェーデン民主党が「政府案ではなく野党案に投票する」と発言した。2党からなる現連立政権は議会で過半数を有していないため、現在第3党のスウェーデン民主党が対抗案に賛成票を投じると、現政権の予算案ではなく、野党案が通過してしまうことになる。

 つまり政権は、自分たちが策定した予算案ではなく、野党案に沿って国政を運営しなければならないことになるわけだ。

*1http://www.dn.se/val/nyval-2015/valjarna-ger-regeringen-ett-bottenbetyg/

*2http://www.dn.se/val/nyval-2015/alliansen-storst-i-ny-matning/