前回に引き続き、元神戸市の消防署長・森本宏さん(84)のインタビューを掲載する。2007年に『チェルノブイリ原発事故20年、日本の消防は何を学んだか? ―もし、チェルノブイリ原発消防隊が再燃火災を消火しておれば! 』(近代消防社)という本を出版し、原発事故の危険さと住民避難の不備を警告していた人である。1954年に関西大学法学部を卒業し、神戸市の消防士になった。市内のいくつかの消防署長を経て1990年に退職し、消防時代の専門分野である防火管理やパニック論について本を出版している。
「チェルノブイリ原発事故20年」は、福島第一原発事故前に書かれたとは思えないほど、原発事故の現実を的確に予言している。チェルノブイリ原発事故、スリーマイル島原発事故や「もんじゅ」ナトリウム冷却材漏れ事故、東海村臨界事故などの事例を分析して、日本の原発防災体制、特に住民避難体制が甘すぎることを警告している。
・日本政府は「(原発事故の)防災対策を重雨天的に充実すべき地域の範囲」(EPZ=Emergency Planning Zone)の目安として半径8~10キロを設定している。
・人体や環境に重大な影響の及ぶ可能性のある範囲=8~10キロ以遠には及ばないという想定である。
・しかし、これはあまりに楽観的な想定である。
・チェルノブイリ原発事故のような炉心溶融などによる爆発事故は、日本の原子炉にはあり得ないという前提に立っている。
・EPZ8~10キロはアメリカの避難区域10マイル(16キロ)の模倣である。
・元々アメリカの半径10マイルは厳密に計算されてできたものではない。スリーマイル島原発事故の5マイル刻みの避難指示がそのまま残っただけ。数字そのものにたいした意味はない。
・これが日本に入ると、これ以外には原発被害は広がらないかのような話になった。