ベトナム中南部に、ダラットという風光明媚な高原地帯がある。この町が、今、日本の農業関係者の熱い注目を浴びつつある。

ベトナムの軽井沢ダラット

 ダラットは、日本の軽井沢に近いイメージだ。標高1000から1500メートル。フランス植民地時代に避暑地として開発された。

 ホーチミンから飛行機で約30分。ダラット空港に降り立つと、清々しい空気が胸の中に吸い込まれてくる。

ダラット市内の風景(写真提供:DIベトナムスタッフ、以下同)

 空港から市内までは約30分。箱根ターンパイクのような松林に囲まれた道を抜けると、眼下に真っ青な水をたたえた湖畔の町が広がる。

 ダラットの町は、湖の澄んだ青、森林の眩しい緑、家々の可愛らしい赤やオレンジの屋根が巧みな色彩を織りなす。旅行者が、一瞬ベトナムではなく、ヨーロッパにいるかのような錯覚に陥る素敵な町だ。

 このダラットを中心とするラムドン省は、ベトナム有数の農業地域である。

 熱帯性気候の緯度に属しながら、高原であるがゆえに一年中気候が安定的で、かつ朝と夜の寒暖差が激しい。また、土壌の水はけもよい。それゆえ、コーヒー、茶、野菜、花などの栽培においては、農業大国ベトナムの中でも有数の生産量を誇る。

日本向けの食糧供給拠点として注目が集まる

 ダラットは、日本の農業関係者の注目を集めている。その理由の1つは、ダラットが、日本向けの食糧の新たな供給拠点としての可能性を秘めているからである。

 日本では、中国から調達する農作物に対する不安が拡大している。そのため、中国以外に食糧の調達先を多様化することが、食品関連の企業にとってのテーマの一つとなっている。