こんなことがどうして起きるのか? 「大統領の側近」をかたった電話1本で大企業の部長に採用された男が、同じ手口で2つ目の会社に就職しようとして失敗し、摘発された。韓国の産業界で「笑えない教訓」になっている。
話の発端は2013年7月にさかのぼる。韓国を代表する大手建設会社の社長が1本の電話を受けた。
「大統領秘書」を名乗る1本の電話であっさり部長に採用
相手は、朴槿恵(パク・クネ)大統領に秘書として長年仕え、側近中の側近と言われ、今は青瓦台(大統領府)総務秘書官を務める人物を名乗った。
面識もないこういう人物から電話がかかってくるのは、この社長にはよくあることなのか。あるいは、あまりにも有名な実力者からの電話ということで動揺したのか。この社長は、とにかく電話に対応した。
相手はこう切り出した。
「Aという男の就職の面倒を見てほしい」
ここでもおかしいと思わなかったのか。
好感触と判断した自称「秘書官」はこう言った。「それでは、明日、午後3時に行かせるから」
A氏は、華麗な履歴書を持参して会社に現れた。この建設会社は、「部長級」としてすぐに採用した。
2014年7月末。A氏はこの建設会社を退職した。1年近く、部長級として給与をもらっていたという。
ここでやめておけば、あるいは、事件は発覚しなかったかもしれない。
だが、美味しい思いをもう1度、とばかり、A氏は、次の会社に接触する。
今度は、通信最大手の企業だった。
2社目で青瓦台に確認され、万事休す
手口はまったく同じだ。
ここでも、最高経営責任者(CEO)との面談に成功する。
「大統領を長年、水面下で補佐してきた」
ちょっとしゃべりすぎたのか。このCEOは、秘書を通して青瓦台に確認した。連絡を受けた青瓦台は、詐欺だと判断して警察に通報し、万事休すとなってしまった。