「地方創生」では地方の農業再生が大きなテーマの1つとなっている

 安倍内閣が「地方創生」(これまで言われてきた「地方再生」と同じ。官僚特有の言葉の遊びである)と言い出した。9月の内閣改造では、地方創生担当大臣までつくって、先の総裁選でライバルだった石破茂前幹事長を任命した。石破氏を据えたことはライバルの閣内封じ込めなどと噂されているものの、安倍首相の地方創生に対する意気込みを示した形にもなり、地方創生はこの秋の大きな話題になっている。

 このような状況に際して、一言、言いたいことがある。それは地方が話題になると農業の話が出てきて、そして必ずと言ってよいほど補助金のばら撒きが始まるからだ。補助金の出所は言うまでもなく税金である。そして、補助金によって農業が再生したためしはない。

 なぜ、補助金によって農業が再生しないのだろう。それは、根本のところで、農業再生と地方の振興が両立しないからである。本稿では、そこのところを根本に遡って説明する。地方創生を語るのは、ぜひともそれを理解してからにしてほしい。

これから農産物の売り上げを増やすのは困難

 現在、日本の農業の売り上げは約8兆5000億円、それに対して農業就労者は約230万人。1人当たりの売り上げは約370万円である。売り上げから種苗、肥料、農薬の代金、農業機械のローンなどの必要経費を除くと、手元には売り上げの半分程度しか残らない。これでは農業は魅力ある職業とは言えない。若者の農業離れが進行するのも当然と思う。

 農業を魅力ある産業にするには、どのようにすればよいのだろう。

 第1に思いつくことは、売り上げを増やすことだ。それには、たくさん売ることが一番だ。