福島第一原発事故関連の取材でアメリカを回った(2014年4~5月)報告を続ける。今回から2回、アメリカで原子力問題を専門とする法廷弁護士、ダイアン・カレン氏のインタビューを掲載する。

 スリーマイル島原発(TMI)事故の健康被害をめぐる訴訟を取材していて、原発への賛否を問わず、ジャーナリストや地元住民からカレン弁護士の名前をよく聞いた。ワシントンDCにある事務所に連絡を取ったところ、インタビューを快諾してくれた。

 TMI事故の健康被害をめぐる訴訟は、およそ2000件の提訴を数えながら、終結まで30年近くかかり、疫学調査は証拠採用されず、勝訴は1件もないという結果に終わった。なぜ原発事故をめぐる訴訟はこれほど難しいのだろうか。インタビューしてみると、日本とアメリカに共通する「企業と個人の力のアンバランス」という問題が見えてきた。

環境破壊で企業を訴えるのは極めて困難

──カレンさんの弁護士としての仕事の内容を教えてください。

ダイアン・カレン氏(以下、敬称略) ロースクールの学生だったとき手伝った事務所が、TMIの訴訟の住民側代理人をしていたのです。それ以来、原子力関連の安全問題を扱う法廷弁護士(英米では法廷に立たない弁護士も多い)として働いています。私は政府の規制や基準に納得がいかない人たちの代理人をやることが多い。まだ政府の仕事は十分ではない、原子炉運転の免許は与えるべきではない、書き換えるべきだ、更新すべきではない。そんな人たちの代理人です。

──政府側の代理人をすることもあるのですか。

カレン いえ。市民の側です。

──TMIは原発問題に関心を持つ最初のきっかけだったのですか。

カレン まったくの最初ではありません。20代前半のころ、ニューハンプシャー州のシーブルック原発の反対デモに参加したことがあります。私がロースクールにいたころ、州立大学では結核の検査のX線検査が義務付けられていたんです。それを血液検査に変えろと働きかけたこともある。