前回のコラムでエボラ出血熱(以下エボラ)の蔓延の怖さを書いた(「エイズよりはるかに怖いエボラ出血熱、蔓延の兆し」)。今回はその続編である。
感染者が1848人、死者1013人
西アフリカを中心に、エボラの拡大は依然としてとどまらない。世界保健機構(WHO)が発表した最新の数字では、感染者数が1848人、死者は1013人に達している。
前回の記事の後半で、ナイジェリアで亡くなったパトリック・ソイヤーさん(40)が首都ラゴスの空港で倒れ、その前後で接触のあった方が憂慮されると記した。
悪いことに、ソイヤーさんを含めて4人が亡くなり、その他11人がエボラに感染している。その他に約200人が政府の監視下に置かれているという。
今回のコラムで述べたいのは、エボラの治療薬やワクチンの研究開発の難しさである。当たり前と思われるだろうが、それは医学的なアプローチの多難さというより経済的な理由が大きい。
否定的な見解で申し訳ないが、正規ルートを経てエボラの治療薬が世に出ることは簡単ではないと、まず記しておく。
エボラの症例が最初に確認された1976年からすでに38年がたっている。ウイルスが特定され、実験室内での抗ウイルス薬やワクチンの研究開発が世界中の研究者によって進められてきたが、いまだに動物実験の段階までしか至っていない。なぜか。
理由を端的に述べるならば、エボラは「ペイしない」感染症だからだ。
新薬の開発には通常、数百億円という巨額の資金が必要になる。ウイルスの基礎研究に始まり、実験室で抗ウイルス効果のある薬剤が発見され、良好なデータがでれば動物実験へと移行する。
そのプロセスの後、ようやく人間に投与される。臨床治験だ。通常は第1段階から第3段階までで(場合によっては第4段階)、段階ごとに投与される人数が増えていく。