7月26日、南ドイツのウルムという町でドイツ陸上選手権が行われた。そこで、走り幅跳びの1位に躍り出たのが、マルクス・レーム(Markus Rehm)、25歳。右足が義足の身体障害者だった。つまり、身障者の選手が通常の試合に参加し、健常者である他の選手を尻目にドイツ選手権1位を物にしたのである。

 ところが、その直後、いろいろな問題が勃発した。このドイツ選手権は、8月12日からチューリヒで開かれるヨーロッパ選手権の選考会でもあった。普通なら、ドイツ大会の上位入賞者がヨーロッパ大会に送り込まれる。ところが、1位を取ったレーム選手は、ヨーロッパ選手権には進めないことになった。

 何故か? 彼の義足が跳躍力を大幅に上げているという疑念が持ち上がり、ドイツ陸上競技連盟が、レーム選手の派遣を認めなかったのである。

自己最高記録を次々と塗り替えた義足の選手

マルクス・レーム選手(ウィキペディアより)

 彼の使っているのは、義足といっても、普通の義足ではない。パラリンピックではよく目にするが、スキーの板を彎曲させたような、ハイテクの装具である。

 問題の跳躍のビデオを見ていると、確かに、この義足はかなりのバネ機能を果たしているだろうと、素人目にも想像できる。これで、レーム選手は8.24メートルという自己最高記録を跳んだのだった。

 レーム選手は、理想のスポーツ選手を絵に描いたようなすがすがしい青年だ。陸上選手特有の筋肉質の体躯だが、背はそれほど高くない。インタビューされると、知的で、はにかんだようで、笑顔がとても可愛い。

 今回の件について裁判で争う気はなく、「チューリヒ出場は諦めた」とあっさり言っていた。ただし、義足が跳躍力に及ぼす効果については、ドイツ陸上競技連盟に、さらに正確な分析を求めるとのこと。