アメリカではここ2~3年で「フェイスブック鬱病」という言葉がよく聞かれるようになった。フェイスブックに代表されるソーシャルメディアで、友人が夜な夜な着飾って楽しそうなイベントに参加したり、非の打ち所のない異性の友人と仲良さそうに旅行したりしている写真を見続けることで、鬱病が誘発されるという説だ。特に10代後半の若者に多いとされた。

 精神科医の世界では、ソーシャルメディアが直接鬱病の原因になることはないとして、「フェイスブック鬱病」の存在は否定されている。すでに鬱病の兆候がある人の症状が悪化することはあるかもしれないが、それはソーシャルメディアのみならず、どんなことでも引き金になり得るという考え方が主流のようだ。

 しかしフェイスブック鬱病という言葉は一人歩きし、定着した。

 深刻に受け止められた、というよりは、冗談半分で使われていることが多いという印象もある。だが、フェイスブック社は、これを由々しき事態だと深刻に捉えていたようだ。マイナスイメージを払拭しようと、独自の研究調査を行い、先月発表した。

 ところが結果的に、マイナスイメージを払拭するどころか「この会社は大丈夫なのか」と呆れられるほどの大失敗PRに終わってしまったのである。

友人が楽しい投稿をすれば自分も楽しくなる?

 論文は、フェイスブックの社員で「データサイエンティスト」という肩書きを持つ社会心理学者、アダム・D・I・クレイマー博士と、コーネル大学の2人の教授との連名で発表された。タイトルは「ソーシャルネットワークにおける大規模情動伝染の実験的証拠」。

 クレイマー博士のチームは、無作為に選んだフェイスブックのメンバー70万人のニュースフィードに、作為的に「明るいニュース」と「暗いニュース」を送り、その後、それぞれのユーザーがどのようなコメントをしたかを分析した。

 ユーザーのコメントの言葉を特殊な方法で分析した結果、明るいニュースを読んだ人はその後気分が明るくなり、暗いニュースを読んだ人はその後気分が暗くなったという結果が出た、という。