エボラ出血熱のウイルスが発見されたのは1976年のことで、スーダンとザイール(現コンゴ)で流行し、602名が亡くなった。その後も、1995年、2000年、そして2007年に、やはりアフリカ大陸で大きな流行となり、死者が出た(それぞれ315名、425名、413名)。
ところが、今年の2月ごろ、同じアフリカでも今までとはまるで違った場所、西アフリカで、エボラ出血熱の患者が出始めた。詳しく言うと、ギニア、リベリア、シエラレオネの3国である。
拡大が続く感染地、西アフリカで猛威を振るうエボラ出血熱
「国境なき医師団」は、当初、ギニアとシエラレオネに数百人の医師や職員を派遣し、4月にはギニアでの流行を止めることに成功したと思われていた。しかし、実際には、感染はその勢いを増し、患者は増えているという。
これまでのように地域的な流行として留まってくれればよかったのだが、感染地はすでに60カ所の地域に散らばっているので対処が難しい。
そして、ついに6月20日、国境なき医師団が、エボラ出血熱の蔓延がすでに制御不能に陥りかけていると発表した。国境なき医師団は、現地で感染者の治療にあたっている唯一の支援グループだが、これ以上、感染地が広がれば、もう、新しい感染地に派遣する人員はいないという。SOSが発せられたわけだ。
エボラ出血熱というのは、急性熱性疾患で、ウイルスの種類にもよるが、死亡率は50%から90%と非常に高い。
罹患すると、最初はインフルエンザのような症状だが、そのうち、激しい下痢や嘔吐に見舞われ、体外や内臓のあらゆるところから出血し、10日ぐらいで死亡するという。出血するのは、血液が凝固しなくなるためで、注射をすれば、今度はそこからの出血が止まらなくなることもある。
原因はまだ究明されていない。ジャングルに住むコウモリ、ゴリラなどを介して感染するというところまでは分かっているが、大本が分からない。また、効果的な薬もなければ、予防注射もワクチンもない。要するに治療法がない。重症の患者に対して為されているのは、まず隔離、そして、脱水症状を防ぐことぐらいだという。
6月25日に国連のWHO(世界保健機関)が発表したところによれば、今回、すでに400人近くの命が失われ、現段階では、今までで一番大きなエボラ出血熱の流行となっている。なぜ、このような事態になったかというと、いくつかの原因が考えられる。