尖閣問題について日本の発想の転換を促す米国側からの提案を紹介しよう――。

 沖縄県の尖閣諸島に対する中国の攻勢がまた一段と荒っぽくなってきた。毎週のように日本領海に中国艦船が侵入し、中国軍戦闘機が自衛隊機に異常接近するなど、もはや一触即発とも言える状態である。中国は尖閣奪取に向けた軍事態勢をますます強めているようなのだ。

 中国政府による反日外交プロパガンダもとどまるところを知らない。「日本は釣魚島(尖閣諸島)を中国から盗み、戦後の国際秩序を変えようとしている」といった日本誹謗の政治宣伝を強化している。

 こうした軍事、政治の両面でのせめぎ合いは、中国が優位に立っている。しかもこのせめぎ合いが実際の軍事衝突につながる危険性も高い。このままだと日本は中国の我が物顔の領海侵犯によって尖閣の施政権さえ骨抜きにされそうである。もしそうなれば、日米安全保障条約が適用され、米軍の防衛義務が発生するのは日本の施政権下にある領域だけだから、日米同盟の軍事効用も空洞化されてしまう。

 そんな尖閣諸島の危機に対し、日本はどうすればよいのか。

 いまのところの最大の頼みの綱は米国である。もし中国軍が尖閣に攻撃をかけてくれば、日米安保条約第5条の発動により米軍がその防衛のために出動することになっている。その場合、日本の自衛隊ももちろん防衛に当たらねばならない。

 だが、米国が中国との全面戦争の危険を冒してまで、尖閣防衛のために対中軍事行動を起こすかというと疑問が残る。オバマ政権はなにしろ中国に友好の手を差し伸べることに熱心なのだ。尖閣周辺に米軍の海軍艦艇や空軍機が出動して、日本支援の軍事意図を誇示することはとても期待できない。その気さえあれば簡単にできる抑止力明示の行動さえも取らないのだ。そんな米国が中国軍を相手に実際の戦闘ができるだろうか。