特集 新都市宣言

スマートグリッドは哲学が問われる

奇跡の環境都市、北九州の半世紀(後篇)

2010.07.29(Thu) 鶴岡 弘之

エネルギー戦略

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「スマートグリッド」という環境技術用語を、最近頻繁に耳にするようになった。その定義は様々だが、一般的には「送電網をITで制御し、地域の電力の需要・供給を最適化するシステム」を指す。

 福岡県北九州市の八幡東田地区は、2010年4月に経済産業省から「次世代エネルギー・社会システム実証地域」に選定された。全国の4つの地域で、「スマートグリッド」の実証実験を行うという事業だ。八幡東田地区はその1つに選ばれた。

 スマートグリッドは、IT企業や電力会社が構築する大がかりなシステムであるがゆえ、住民にとっては縁遠い話のように思われがちだ。

 しかし、八幡東田地区ではスマートグリッドを、単に先端技術を駆使した省エネシステムだとは捉えていない。このまちのスマートグリッドは、「安心して住めるまち」「誰もがまちの一員としての幸せを感じられるまち」を実現するための手段の1つなのである。

 前回は、八幡東田地区には「所有の社会から共有の社会へ」という骨太なまちづくりの哲学があることを伝えた。八幡東田地区が今回の実証実験で構築しようとしているスマートグリッドは、まさにこの哲学の上に成り立つものだ。

 前回に引き続いて登場していただくのは、北九州市環境局の松岡俊和・環境モデル都市担当理事。八幡東田地区が構築しようとしているスマートグリッドの本当の狙いを聞いた。

「使いこなす」という新しい機能

── 八幡東田地区では、まち全体としてエネルギーをどのように管理しようとしているのですか。

松岡氏(以下、敬称略) 2004年に、我々は八幡東田地区でエネルギーの共有化をやろうという目標を立てました。

 今まで、エネルギーの利用形態やCO2排出量の削減方法は、産業用、民生用、商業用などの間に壁がありました。八幡東田地区にしても、工場のエネルギーは工場の中だけで使いこなそうとしていた。

 でも、製鉄所のコークス工場からは水素がいっぱい出ているんです。工場からまちの水素ステーションへパイプラインを引けば、その水素を燃料電池の燃料として使うことができます。また、天然ガスを燃やして熱と電気を発生させる「天然ガスコジェネ発電所」にしても、熱は工場の中で使って、電気は工場と民生で分けるといったように振り分ければ、効率的で無駄がなくなります。

 そういうふうにエネルギーをやり取りして、融通していくということが今まではなかったんですね。これからは、みんなでエネルギーを賢く使いこなして、共有しようということです。

 今までのエネルギーは、「作る」ものであり、「使う」ものだった。電力にしても、基本的には与える側と使う側の関係しかありませんでした。そこに、「使いこなす」という機能を加えようとしています。街区で見ると、隣同士で融通し合えばそれができるんです。

── 使いこなし、共有するための方法が、スマートグリッドなんですね。

松岡 八幡東田地区はまち自体で1000キロワット以上のメガソーラー発電所をつくろうとしています。その電力や、工場で発生するエネルギーをみんなで使いこなしていきます。

 具体的には、発電所とユーザーの間に「節電所」をつくろうとしています。町全体のエネルギー利用状況やCO2排出量の状態などを可視化し、エネルギーの最適分配を行う所です。節電所を通して双方向でエネルギーをやり取りし、まちとしての全体最適を図っていきます。このシステムを1~2年のうちにつくる予定です。

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