第1回大学対抗カンボジア・ロボットコンテスト(通称ロボコン)まであと2日と迫った3月27日。

 タイからの強力な助っ人、公共放送局MCOTのジョッキーさん一同と、2012年のABU(アジア太平洋放送連合)ロボコンの敢闘賞受賞チームであるトゥラキットバンディット大学のメンバーと私は、参加大学の1つであるPPI(プレアコソマ工科総合専門学校)に向かっていた。

 ここで、参加大学4校の指導教員たちによる最後の「ルールチェック」を行うためである。

最終ルールチェックで飛び出した予想外の発言

 とにかく、カンボジア初のロボコンはあらゆることが初めてなので、トラブルだらけ。様々なスケジュールは遅れに遅れ、ルールの決定は最後の最後になった。

 ラインフォロワーという大まかなルールは決まっていたものの、スタートやゴールはどうするのか、計測タイムや1チームの持ち時間をどうするのか、などの細かいルールが最終的に決定したのは、テストランという形の「予選」が終了した3日後、コンテストのわずか11日前だった。

 しかし、その「予選」に、一番の優勝候補と目されていたITC(カンボジア工科大学)からは、なぜか1チームも出場しなかったのである。

 「予選」が終了したその場で私は、ITC以外のすべての指導教員と、その場にいた学生たちに、一つひとつのルールの確認をしていった。その結果決まったことは次のようなルールだった(以下は概略で実際はもっと仔細にわたっている)。

1.1チームのスタートまでの準備時間は30秒、そこからロボットを走らせることができる制限時間は2分。ラインからはずれたり止まってしまうなどのエラーが起きた場合は、何度でもその制限時間内でやり直しをすることができる。

2.ロボットの走行時間のカウントは、ロボットの末尾がスタートラインを越えてから、ゴールラインをその末尾が越えるまでとする。

3.ゴールしたロボットは、ゴールラインからスタートラインまでの間でストップしなければ失格となる。

4.1秒以内の差はタイムキーパーの手動計測の誤差の範囲内とし、同着とする。

5.ロボットの走行は、全チーム共通で、午前1回、午後1回の計2回とする。

 これをNPIC(カンボジア国立工科専門学校)の指導教員にクメール語でまとめてもらい、それを英語に翻訳したもので私が2度ほど確認をとったうえで、全参加大学の指導教員には既にクメール語のルールブックを私からメールで配布。

 異論のある場合はメールで全員に返送してほしいとお願いをし、今までに1通も異論メールは来ていなかった。つまり、合意ができている、と思われていた。