韓国でも一般的な関心は高くないが、証券業界で歴史的な再編劇が進んでいる。何しろ、業界1位、2位の大手を含め、上位圏にある4社、さらに中堅以下を合わせると10社以上が「身売り中」という事態だ。こんなことはIMF経済危機以来のことだという。

 「資産を詳細に調べたが、もう少し買収金額を低くしたい」「ただでさえ過小評価ではないか。もっと引き上げてほしい」

 韓国証券業界最大手であるウリィ投資証券の買収を巡って、2013年末から売り手側のウリィ金融持ち株会社と買い手側のNH農協金融持ち株会社との間で激しい交渉が続いている。

 ウリィ投資証券は、資産規模が29兆ウォン(1円=10ウォン)を上回る業界最大手(2013年9月末現在)。政府が大株主であるウリィ銀行などを傘下に持つ金融グループの証券部門だ。2005年にウリィ証券がLG投資証券と合併したのを機に業界最大手に浮上した。

民営化で身売りが決まった最大手ウリィ、NH農協がセットで買収か

 業界最大手の証券会社の身売りが決まったのは、ウリィ銀行などの政府保有株の売却、つまり民営化が決まったためだ。

 ウリィ銀行はもともと、IMF危機で経営破綻した韓国の大手銀行、商業銀行、ハンイル銀行、平和銀行などを合併させ、公的資金を投入してできた銀行だ。その後、証券会社などを傘下に加えた金融グループになった。

 今でも中核のウリィ銀行の株式の56.97%を預金保険公社が保有している。ウリィ銀行の民営化は李明博(イ・ミョンバク)政権も目指したが果たせず、朴槿恵(パク・クネ)大統領就任とともにようやく動き出した。

 ウリィ金融持ち株会社を一括売却することも検討されたが、事業規模が大きく、買い手が見つけにくいとの判断から、ウリィ銀行、地方銀行、証券会社をばら売りすることになった。

 このうち、金融界で「最も人気が高い」と言われたのがウリィ投資証券だった。2013年末に実施された入札には、大手銀行を傘下に持つKB(国民銀行)金融持ち株会社なども参加したが、金融事業の強化を目指すNH農協金融持ち株会社が、ウリィ投資証券、ウリィアビバ生命保険、ウリィ貯蓄銀行をセットで買収する方針を打ち出した。

 売り手から見れば、売却手続きを大幅に省けることもあり、NH農協金融持ち株会社が優先交渉権者に選定された。

 韓国メディアは、NH農協金融持ち株会社が提示した買収金額を「1兆ウォン+α」と報じている。