宮城県内のある仮設住宅で、そこに住む人たちの話を聞いていたら悲しくなった。同じ地域のなかで、仮設の人々への「差別」が生まれていると思ったからだ。

 仮設の住民が最初に訴えたのは、子どもたちの遊び場がないという話だった。

「校区外に出ている子どもがいる」と通報

 もともと仮設の住民たちが住んでいた海岸に近い地域は、津波の直撃を受け、多くの住宅が流された。その地域にあった小学校も被災したので、別の場所の中学校に間借りしながら、元の場所に新しい校舎ができるのを待っている状態だ。仮設と小学校とは離れているので、子どもたちはスクールバスで通学している。

 子どもたちは授業を終えると、スクールバスの時間があるのでまっすぐ帰ってくるしかないのだが、仮設に戻っても遊び場所がない。仮設の場所は、その地域にある小学校のグラウンドだったので、仮設の敷地内には、遊ぶスペースはない。地域の小学校には、仮設で削られたあと若干の校庭が残っているが、ここで放課後に遊ぶのは、その小学校で遊ぶ子どもに限られている。

 その小学校からは、閉校する前の30分程度は仮設の子どもたちも遊んでもよいと言われているのだが、子ども同士の縄張りもあり、実際に遊ぶのは難しいという。

 仮設の周りは、住宅と農地が広がっているところだから、遊ぶ場所がないわけではないが、仮設の子どもたちは「校区外」ということで、子どもだけで出歩くことを禁じられている。

 子どもたちが仮設の外に出ると、地域の子どもたちから「校区外で遊んでいいのか」といった非難を浴びるのだという。子どもだけで近くのコンビニに買い物に行ったら、地域の住民から「校区外に出ている子どもがいる」と、学校に通報されたこともある。