ホーチミンに、イオンのベトナム1号店となるショッピングモールがオープンした。バイク4000台と自動車500台の駐車場を持つベトナム最大規模の商業施設。日系の大手小売りとしては、ファミリーマート、ミニストップについでの本格進出となる。

加速する外資チェーンの進出、だがコンビニエンスストアは赤字

1月1日プレオープンしたホーチミン市のイオン1号店(写真提供:筆者)

 イオンにとってはマレーシア、中国に次いで3カ国目のモール型大規模施設の出店となる。生活必需品に事欠くベトナムにおいては、日本的な品ぞろえやサービスを展開するイオンへの期待は大きい。

 2012年のベトナム国内の小売市場の規模は約12兆円。2013年の成長率は前年同期比12~13%と予測されている成長市場だ。

 国内には現在、ショッピングモール約130店舗、スーパーマーケット約700店舗、コンビニエンスストア約1000店舗が展開されている。

 イオンは数年がかりの準備の末に、ようやく1号店を開業したが、業界を牽引するのは、「コープマート」(越)、「ビッグC」(仏)、「メトロ」(独)の3社。この3社を中心に、外資(約20社)と多数の現地企業がしのぎを削る激戦市場となりつつある。

 上昇気流の魅力的な市場に見えるが、そうは問屋が卸さないのがベトナム。日系を含む外資系が挑むハードルは高い。

 例えば、最激戦の一つコンビニエンスストア市場。生鮮食料品を中心に売るミニスーパーのような形態も含めて10社以上の参入企業があり、1000店舗展開されていると言われるが、実は、1社として黒字の企業はいないと想定される。

 隣のタイ(バンコク)に比べて、消費者の購買力が20%低い一方で、テナント料(土地代)は逆に20%高いというアンバランスが足をひっぱっている。黒字化するには、最低でも200店舗は必要と言われており、各社は体力勝負の先行投資の状況にある。

 ベトナムの小売市場を理解するためには、パパママショップ(家族経営の小規模店舗)文化と、外資規制の2つを知っておく必要がある。

ベトナムにパパママショップ文化が根強く残る理由

 近代的チェーンが順調に増えつつあるベトナムだが、こうしたチェーン店舗の比率は、実は、まだまだ相当に小さい。

 小売売上全体に占めるチェーン店舗比率は約20%。近隣の東南アジア諸国と比べても半分以下の比率である。消費の大半は、ベトナム全土に40万~50万店舗あると言われるパパママショップ(家族経営の小規模店)が中心となる。