先日書いたが、先週9月5~6日にロシア・サンクトペテルブルクで開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議の前にバラク・オバマ米大統領がスウェーデンを訪問した。
到着後、スウェーデンのフレドリック・ラインフェルト首相と会談した大統領は、さっそくシリアへの軍事行動への支持を求めたようだが、首相は「国際的な平和と安全保障の問題は国連の場で対応すべきだと信じる」と明言し、米国を支持する姿勢はさっぱり見せていない。
その後に出された北欧5カ国との共同声明でも、米国と軍事行動をともにすると表明した国はない。北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるデンマークですら、ヘレ・トーニング・シュミット首相は「外交面で後押しする」とは表明したが、軍事面での協力については何の言及もしていない。
シリア難民全員を受け入れ、申請すれば永住権も付与
オバマ大統領がスウェーデンに足を踏み入れる前日の3日、スウェーデン政府は入国を希望するシリア難民全員を受け入れると発表した。一時的な滞在許可だけではなく、申請すれば永住権も得られる。家族を呼び寄せることも可能になる。
この理由として、移民難民政策担当省はホームページで「シリアでの紛争が3年目に入り、さらにエスカレートしている。 国際政治や外交政策の努力でも、現在の状況では解決には到底至らないように見える。限定的な外国の軍事作戦は、国の状況を安定させることが期待できない。従って紛争は恐らく継続するだろう」と説明している。
シリア難民に永住許可を付与する国は、欧州では前例がない。
同省のフレドリック・ベングトソン氏は、「現在スウェーデンは、こういったケースについてのロールモデルとなっている。今日シリアで何が起こっているのかは、誰の目にも明らかだ。 今、スウェーデン内で社会の成員全員が連帯し、責任を取る必要がある」と話している*1。
同省が言うように、シリアの内戦が解決に向かい、難民の波が減少する見通しは全く立っていない。
スウェーデン政府が「全難民受け入れ」を発表した同日、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が、シリアの国境を越えた難民の数が200万人を超えたと発表した。この前週に国連人道問題調整事務所(OCHA)が発表した数字によると、シリア国内で避難している人は425万人、これにイラク、ヨルダン、レバノンなどの周辺国へ入国している難民の数を合わせると600万人を超えている*2。
*1=http://www.migrationsverket.se/info/7595.html, http://sverigesradio.se/sida/artikel.aspx?programid=83&artikel=5634316, http://www.dn.se/nyheter/sverige/darfor-far-syrierna-stanna/