「日本には“ハラル”がありますか?」とマラヤ大学のムスリム(イスラム教徒)の教え子に聞かれ、即答できなくて困ったことがある。

 同大学はマレーシアで唯一、日本研究を専門とする東アジア研究学科(日本研究、中国研究、韓国研究)を設置しているが、創設以来、日本研究は常に一番人気の学科。学生のみんなが“憧れの日本”に一度は行ってみたいと思っている。

 マレーシア最古の国立大学でもあり、国内では最多数の日本人留学生が学んでいる(国立大学からの留学生が中心)。マレーシア人の学生たちは、交換留学制度や姉妹校提携を結んでいる大学への留学や短期交流イベントで、日本を訪問することを楽しみにしている。

ハラルとは? そしてハラル認証規格とは何か

 しかし、いつも学生の頭を悩ますのが、本当は楽しみであるはずの「食事」。本場の日本料理を堪能できると楽しみにするところが、日本国内には、多民族国家の米国などの諸外国と比較して、まだまだ、「ハラル」を扱っているレストランやお店が極端に少ない。

 そのハラル(Halal、「ハラール」とも発音する)とは何か。ハラルとは、アラビア語で「許されたもの」を意味し、イスラム法で「合法とされるもの」。反対に非合法的なものは、「Haram(ハラム)」「ノン・ハラル(Non Halal)」という。

 イスラム教というとまだまだ日本ではとっつき難い宗教で、「お酒禁物」「豚肉禁止」など、さまざまな戒律がある。こういったイスラム教徒に定められた日常での規律を「ハラル」と総称する。

マレーシア政府ハラル認証機関(JAKIM)発行の「ハラル認証規格」。中央のアラビア文字は「ハラル(ハラール)」、下部は「マレーシア」と表記されている

 約66%がムスリム(イスラム教徒、マレー系人)というマレーシアでは、宗教に関係なく日常生活の中で、知らず知らずのうちに、手に取ったり、口にしたり、「ハラル」に接する機会が多い。

 まだまだ発展途上で将来的に成長市場として期待されるハラルは、代表的なものとして食品から始まって、薬品、化粧品、サプリメントなど、肌に触れたり、体内に摂取するものから、観光等のサービス全般にいたるまでの広範囲がカバーされている。

 イスラム教の厳しい戒律に従って加工され、原材料保管、製造保管・工程、包装など、製造から流通にいたるまでのトレーサビリティーが確立され、製品の安全・安心を保障することから、ムスリム以外のノン・ムスリムにも需要が期待され、世界に通じるお墨付き制度として注目を浴びている。

 例えば、食品の場合、イスラム教で禁止されている豚肉や酒(ハラム)を全く使用せずに調理加工。鶏肉や牛肉もイスラム教に則った形式で処理されることが義務づけられ、薬品や化粧品では豚由来の酵素などの使用を禁止するなど、適正で、厳格な基準が定められている。

 また、それらの製品には、ハラル認証規格が表示される。ハラル認証は原材料、製品品質、製造過程などを審査し、イスラム法上、認可された製品のみに表示。また、その商品を扱うレストランなどにも「ハラルレストラン」として店頭に表示される。