経営力がまぶしい日本の市町村50選(17)

 山梨県南巨摩郡早川町は山梨県の南西部に位置し、面積約370km2の広大な区域を有する、南アルプスの峰々に抱かれた山間の日本一人口の少ない町である。町の面積の96%を森林が占め、急勾配の地形に集落が点在している。

日本で最も人口が少ない町

 周囲の山々が織りなす四季の表情は豊かで、春には「南アルプス早川山菜まつり」、秋には「南アルプス紅葉とそばまつり」などのイベントが開かれ、新緑や紅葉を楽しむ観光客でにぎわう。

赤沢宿より七面山を望む(ウィキペディアより)

 また、温泉も豊富で、1300年の歴史を有する西山温泉をはじめ、奈良田温泉、湯島の湯、草塩温泉など数多くの温泉に恵まれているのも特徴である。

 伝統的な建造物・石垣・坂道・石段などから構成される赤沢宿の町並みは、周囲の山並みとよく調和した集落景観を保ち、重要伝統的建造物群保存地区にも指定されている。

 さらに早川町の最奥にある奈良田集落は秘境とも呼ばれ、その土地は急峻でかつ寒冷地であり深い谷間であることから水田耕作はまったく行われず、焼畑による雑穀を主食としてきた。

 そんな早川町であるが、高度経済成長期までは、焼畑農業と林業、建設業などを主軸に自給自足の独特なスタイルを維持してきた。

 しかし、現在は1次産業も衰退し、目立った産業振興もなく、この40年間で人口が5000人弱から約1200人(2013年3月)へと急激に減少している。

全国初、義務教育費の完全無償化を山村留学にも適用

 危機感を募らせた役場は、大胆な施策に乗り出す。

 平成24(2012)年度から町内の小中学校に通学する児童や生徒の教材費や給食費、修学旅行費など義務教育にかかる経費の完全無償化するという全国初の試みである。さらにこれを山村留学制度で受け入れた子供たちにも適用するという徹底ぶりである。

 町づくりの根幹である子供を大切にし、児童数の減少に歯止めをかける町長の覚悟の表れとも言える。

 山村留学とは、全国の小学1年生~中学3年生を対象に、1年間以上家族まるごと町に転居してもらう取り組みである。