今年に入り、米国では熟年離婚が話題になってきた。

 まずは政界でよく知られたおしどり夫婦だったアル・ゴア元副大統領(62)とその妻が、40年の結婚生活に終止符を打ち、大きく報道された。2人が離婚の理由を明らかにしなかったことから、ゴア氏が出演しアカデミー賞を取った映画のタイトルになぞらえて「『不都合な真実』離婚」と揶揄された。

 映画界では、俳優のデニス・ホッパー氏(73)が末期ガンで余命わずかと言われながらも離婚。テレビ界では、CNNの看板番組ホストであるラリー・キング氏(76)が8度目の離婚を発表している。

 そうしたニュースを見聞きするまでもなく、我々日本人には「米国では離婚など当たり前」というような先入観がある。米国人も「結婚の半分は離婚に終わる」と信じている。しかし、実はこの数字に統計学的な裏付けはない。

 それどころか、発表された最新のデータによると、米国の離婚率は1970年以来、最低の水準を記録した(National Center for Health Statisticsの調査による)。

「50%の夫婦は離婚する」という神話

 米国の離婚率は60年代後半から上がり始め、70年代から80年代初頭にかけて急増した。そして81年にピークを迎え、以来徐々に下がり続けてきた。

 最新データとして発表された数字によれば、米国では人口1000人あたり3.6の離婚があるという。しかし「離婚率は△%」という分かりやすく、かつ信頼できるデータは存在しない。すべての州が婚姻関係の数字を把握しているわけではなく、結婚率や離婚率を調べたデータも調査方法がバラバラで比較が難しい。

 「50%の夫婦は離婚する」というのは、80年代のある年の結婚件数と離婚件数を単純に比較したものが根拠となったらしい。分かりやすい数字なのでいつの間にか一人歩きし、カップルが危機を迎えた時に「どうせ半分の結婚は破綻するのさ」と自嘲的に使われるようになり、定説となったと言われている。

 専門家はピーク時でも離婚率は40%前後、現在では30%前後ではないかと見ている。だが、経済状況や人種、宗教によって率が大きく変化するため、全体の数字に意味はないという。