日本の良いところが、このパリで、あるいはもっと大きく広げてヨーロッパでどのようにその魅力を発揮して永続できるのか、それが最近とくに気になる。
前回のコラムでご紹介したMIWAはそのチャレンジとして最たるもので、日本文化の真、行、草の真の部分、極上の針の先のようなコンセプトでもって日本人自身がみずから切り込んできた例とすれば、今回ご紹介するショップは、フランス人の目でセレクトされた日本のいいモノを扱っている点で興味深い。
店の名はちょっと長い。「COMPAGNIE FRANCAISE DE L’ORIENT ET DE LA CHINE(コンパニー・フランセーズ・ドゥ・ロリオン・エ・ドゥ・ラ・シーヌ)」。
「オリエントと中国のフランス会社」という直訳になるこのネーミングは、覚えやすさを狙ったものというよりも、植民地時代の貿易組織「東インド会社」などを思い起こさせる響きがある。
50年近い歴史を誇る老舗がリニューアル。新店舗には日本食レストランも
もっとも1966年のこの店の始まりそのものが、歴史物語的な香りをまとっている。創設者フランソワ・ドートレズム(François Dautresme、1925~2002)は、1963年に初めてアジアを訪れて以来その魅力に取りつかれ、モンゴルからタクラマカン、文化大革命まっただ中の中国も旅して回った。
それから40年ほどの間に彼が蒐集したアジアの文物は数千におよび、自身のパリの店(以下CFOCと略す)に並べるだけでなく、バルセロナでは収集品をもとにした展覧会が催されたりもしたほどだ。
彼が興味を持って集めた品々は、竹の椅子、しょうがのおろし金、虫籠、せいろ、イグサのクッションなど、つまりはアジアの村々で長年作られ使われ続けてきた日常の道具。それらがヨーロッパでは新鮮な美として迎えられ、パリのCFOCは趣味人の間では評判のアドレスとなり、今に至っている。
パリ8区オスマン通り。デパート街の喧騒から少し隔たった一等地に現在のCFOCはある。創設者が他界してからすでに時が経ち、経営陣も代わり、新進気鋭のアートディレクターを迎えて大規模なリニューアルが行われ、昨年再びその扉が開かれた。
外光をたっぷりと取り入れる1階には、新たにレストランもオープン。これが日本食をメインにしたもので、シェフは韓国人だが、日本人にも納得のいく、なかなかのクオリティの料理を出す。