ここ2~3日の寒さが嘘のように暖かい春の日。東京の下町、人形町から浜町に伸びる甘酒横丁を明治座に向かうと、桜の木が並ぶ緑道と交差する。

 昔は水路だったその緑道を左に切れ込んだ先に一軒の茶屋。

 散歩がてら、そこでお茶をした。手には、久しぶりに本棚から出した昔の新聞切り抜き帳。

無線電話と放送、その過去と現在

 ページをめくっていると「無線電話だった放送」という切り抜きに目が止まった。2003年10月6日電波新聞。署名は(笹)。

 「放送」という言葉の由来について書いてある。それはこんな感じだ。

 第1次世界大戦で英国軍が無線電話を使って海上の船に情報を送っていた。彼らはこれを「ブロードキャスト」と呼んでいたのだが、その言葉を日本の商船の無線局長が「放送」と訳したのが「ブロードキャスト=放送」の始まりだという。

 当時すでに「無線電話」という言葉は使われており、もしその局長が「放送」という言葉を思いつかなければ、いまのテレビは「無線電話」と呼ばれていたかもしれない、という。

 このコラムを読んで、あらためて「放送」と「無線電話」の根っこは同じなんだよなぁと思った。

 それが、いまではその2つにそれぞれ専業の会社がいて、交じり合うことはない。

小さな機械をテレビに差し込むスマートテレビ

通信会社のお店が向かい合う新大橋通り(筆者撮影)
 

 この切り抜きを見て、2月に通信キャリアが「スマートテレビ」と名付けた商品を売り始めたのを思い出した。

 通信会社が「テレビ」をやる。「放送」と「通信」が交わりだしたのだろうか。

 茶店を出て、緑道を東にまっすぐ進むと、すぐ新大橋通りに突き当たる。通りを隔ててドコモとソフトバンクのお店が向かい合っている。ちょっと覗いてみよう。