「これで100%だとは思わず、80%くらいの完成度なのだという心持ちであえてリリースし、残りの20%を顧客に埋めてもらう前提で商品開発しています」

 このようなスタンスで商品開発していることを、ある外資系メーカーの方から聞いたことがある。

 もちろん、不良品を中途半端に世に出してしまうということではない。ベストを尽くして商品開発を行った上でリリースはするが、そこから先は顧客の声の中に改善点を見出し、より良い商品にバージョンアップしていくスタンスであることを明確にしている。

 それにより、ユーザーのニーズに適う商品開発を“効率的に”実現できているのだという。多かれ少なかれ、どのメーカーもその観点を持っているとは思うが、同社は「ユーザーと共に商品をつくる」というマインドが前面に出ていたことが印象的であった。

ソーシャルメディアの浸透で「ユーザーと共につくる」商品開発が加速

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ソーシャル化によりユーザーを巻き込んだ商品開発が加速している〔AFPBB News

 「ユーザーと共に商品をつくる」という試み自体は、いまに始まった話ではない。従前よりずっとなされてきたものだ。食品、飲料、文具、化粧品など、実に様々な商品開発の過程に消費者が参加し、一緒にモノづくりを行うプロジェクトが多数行われてきた。

 それは自動車開発のようなものにも及び、フィアット社がユーザーを巻き込んでコンセプトカーを共同設計するというMIOのプロジェクトなどは有名だ。基点となるWebサイトには40カ国以上から1万人以上がユーザー登録し、7000件以上のアイデアや提案が寄せられた。

 このプロジェクトでは、機能とデザイン、ブランディングとマーケティングのアイデア、試作車に対する意見と、段階的にユーザーの声を傾聴し、開発のプロセスを共有した。

 その多くは企画フェーズにおけるアイデア募集型であるが、かつて英国のスポーツカーメーカーである Caterham Cars 社が同じく英国のWikitanium社と共同で立ち上げたユーザー参加型自動車開発プロジェクト「Project Splitwheel」のように、技術者が使う開発ツールなどをユーザーに提供し、技術開発のプロセスに踏み込んだものもある。