キプロスなどという、日頃あまり話題にならない地中海の島のせいで、EUが揺れている。
キプロスは南北に分かれているが、現在問題になっているのは南のキプロス共和国で、人口約87万人(北はイスラム系の住民が住んでいて、トルコが仕切っている)。
マネーロンダリング天国だったキプロス
ドイツでは去年からしばしば、この国のバブル崩壊が話題になっていた。
長年、キプロスの銀行は、魅力的な金利を売り物に投資家のお金を集めていた。税金は安く、法律は抜け道がいっぱいで、マネーロンダリングはし放題。
一時は国家経済の70%が金融による収入。その挙句、銀行資産が経済規模の8倍と、まことに不健全な状態となり、しかし、まさにそのおかげで、長い間、キプロスは好景気で潤っていた。
キプロスが脱税天国になったのは、何も最近の話ではない。政府はすでに1970年代に、ヨーロッパ、アフリカ、中東の真ん中という地の利を生かして、自国を、スイスとまではいかなくても、リヒテンシュタイン並みのタックスヘイブンにしようと図った。
さらに、1990年にソ連が崩壊すると、好景気は絶頂となった。まもなく郵便箱だけの幽霊会社が4万を超えたが、そのお金がどこから来たものかはやはり一切問われることがなかった(2012年11月3日付 Der Spiegl)。
現在、キプロスに投資されているお金のうち、少なくとも198億ユーロ(約2兆4000億円)がロシアからの資金だという。
ロシアとキプロスは伝統的に縁が深い。第2次世界大戦後、キプロスは非同盟運動国(NAM) の1つとして、公式には東西どちらの陣営にも属していなかったが、ロシアはキプロスを積極的に支援していた。
多くのキプロスの若者がモスクワへ留学し、一方、ロシア人は、キプロスをヨーロッパへの架け橋と見なしていた。キプロスの高級品店ではロシア語が通じ、ロシア人相手の商売が大いに繁盛した。
キプロスの好景気にもう一度拍車がかかったのが、2004年のEU加盟だ。2008年にはユーロが導入された。
そこでキプロスは、裕福なロシア人が容易にキプロス籍を取れるように計らい、ドイツ情報局の調べでは、すでに80人のロシアの権力者、富裕層の人々がキプロス国籍となり、EU市民としての権利を享受しているという。
ちなみに、投資家でロシアの次に多いのが、英国だそうだ。キプロスは1960年まで英国の植民地だったこともあり、今でも3500人の英国兵が駐屯している。