3月17日、第12回全国人民代表大会(全人代)が閉幕した。晴れて国家主席に正式就任した習近平氏は、講話の中で何度も「中国夢」(チャイナドリーム)というキーワードを繰り返し、新政権は国民の生活を重視し、国民一人ひとりの夢を実現できるのだということを印象付けようとした。
中国では、教育、医療、高齢者福祉に始まり、手の届かない住宅価格、貧富の格差、環境破壊など難題が山積する中で有効な政策が待たれている。しかし、「新政権に有効な政策が打てるのか?」と国民は疑心暗鬼だ。
今回の「国五条」が最たる例だ。
全人代の会期中、上海では、不動産市場の過熱を抑制する5つの強化政策「国五条」が導入された。この政策により、住宅の売却益に対し20%の課税が実施されることになった。
これを受けて3月6日には、浦東新区にある不動産取引センターでは駆け込みで不動産登記に訪れる人の長蛇の列ができた。
10年にわたって不動産価格の抑制策を打ってきたが・・・
国五条に対して、「全人代の同意がなければ課税を導入することはできないはずだ」「庶民の財産を国が巻き上げてどうする」などと猛反発する上海市民もいる。
中でも「また調整策の導入か」という呆れ顔の反応は見逃せない。
中国不動産の専門家であるA氏は、「国五条」が公布された理由を「『限購令』(注)が有効ではなかったからだ」と語る。社会の不満を抑えるためにも、住宅価格の抑制は国家的最優先課題の1つとも言われてきた。それにもかかわらず、いままでの政策は何の効き目も発揮しなかった。
(注)限購令は、「各都市に戸籍のある者しか買えない」「保有できるのは2戸まで」「外地戸籍者は1戸まで」「購入者は、過去5年間の所得税と社会保険料の納付を証明できる者」などとする法令。購入そのものの行為を規制し、投機的行為を抑制するのが狙い。
過去3年を振り返れば、2010年に「国十条」が、翌2011年には「新国八条」が導入された。いずれも異常な急上昇を見せた住宅価格を抑制するための調整策だが、結局、政策導入後も価格の上昇傾向は続いた。