西洋生まれの香水の世界で、日本人がプロデュースした香りが10年以上も前から続くロングセラーになっている。新間美也が紡ぎ出したブランド、Miya Shinmaだ。近年はロシアでも人気で、大統領夫人まで Miya Shinma のファンだという。

 毎年、何百という香水の新作が世に送り出される中、ほとんどは短命ですぐに姿を見せなくなるのだから、なんという偉業だろう。これまでの歩みについて聞いてみたいと、パリに拠点を置く新間を訪ねた。(文中敬称略)

当初は「自分の名前をブランド名に」が、くすぐったかった

 Miya Shinma は、「日本」「和」をコンセプトにした高級香水ブランドだ。現在、はな、月、風、桜、緑の葉、ひのき、みず、ゆきの8種類を発売している。

ブランド Miya Shinma は、フランスで、イギリスで、ドイツで、ロシアでと、日本に興味を抱く世界の人たちに愛されている香水。最新作「ゆき」のほかに、はな、月、風、緑の葉、桜、ひのき、みずの計8種。日本では、こちらで限定的に販売(写真 ©Miya Shinma)
 

 シンプルなボトルにシンプルなラベルは上品で、凛とした誇りさえ感じられる。中身の香水に厳選した材料を使っているのは、言うまでもない。品格がエッセンス自体からもにじみ出ている。

 新間美也のことは、香水好きの人なら「ああ Miya Shinma を作っている人だ」と分かるかもしれない。

 新間は、調香師としてパリで香水作りに励むかたわら、日本に年最低3回は出かける。日本で、趣味としての香りの講座を開いたり、調香師になりたい人たちを指導したり、オーダーメイドの香水作りをするサービスを展開したりしている。調香や香水に関する著書もある。

 Miya Shinma は、粋の代名詞として名高いパリの老舗百貨店ボン・マルシェで陳列され、常連客の裕福層たち(特に女性)から評判を得た。香水が発祥した地フランスの人にとっては、香水は生活になくてはならない代物。自分のお気に入りの数本を持っていながらも、いつも素敵な香水にはアンテナを張る人が多い。