東京都杉並区のとある民家風の建物に、連日ひっきりなしに見学者が訪れています。そこは東京コミュニティスクール(以下、TCS)。

 1学年最大5~6人という超少人数制小学校の授業スタイルを見に来るのは、入学を考える親はもちろん、小・中学校や高校の教員、大学の研究者、地方議員や自治体職員、社会起業に関心のある若者や大学生など、幅広い訪問者です。

 雑誌などのメディアで取り上げられたこともあり、最近は地方在住者から入学の問い合わせもあるほど全国規模で認知度を上げ、全ての志願者を受け入れることが容易でなくなりつつあります。

見学者が絶えない学校の徹底した「探究型」教育

東京コミュニティスクール(TCS)の市川 力校長(写真提供:TCS、以下同)

 一般的にコミュニティスクールは、地域の人々が学校運営に積極的に関わるという点では既存の学校と異なるのですが、文部科学省の学習指導要領に準じたカリキュラムで、教育上の独自性は乏しいのが現状です。

 現在大阪府教育委員会で特別顧問を務める藤原和博氏が杉並区和田中学校の校長時代に取り組んだ「よのなか科」も、社会との接点を持つという点で非常に優れたコンテンツですが、あくまでも補助的な科目に過ぎません(現在は「よのなか科NEXT」として実施)。

 しかしTCSは、いわゆる文科省型のコミュニティスクールとは一線を画し、テーマ学習に代表される「探究型」と呼ばれる独自のカリキュラムを展開しています。

 それは子供の好奇心を喚起し、思考力やプレゼン力、チャレンジ精神などを培うもので、教室で学ぶ、教科書を使う、正解を早く求めるなどの従来の学校的思考からの解放を追求した内容と言えましょう。

 テーマ学習の例としては、「遺伝子について考える」「コミュニティにおける寄与とは何か」「恩師の告別式でどんな弔辞を述べるか」「石から大地のメカニズムを考える」「身体に優しいランチメニューを考える」など、自分たちに関わる身近なことをきっかけに、明確なミッションに取り組む仕掛けが施されています。

 TCSは今年で8年目を迎えますが、設立以来、時代が求める教育の在り方を追求し続けています。昨今、学歴社会の限界に直面し高等教育の存在意義が問われているなか、2014年に開校が予定されている軽井沢インターナショナルスクールなどをはじめ、オルタナティブ教育の意義がますます社会に認知されるようになりつつあります。

 実際、TCSへ子供を通わせているのは現在の教育に疑問を抱く親たちです。総じて海外経験が豊富で、海外の教育事情をよく知っているからこそ、教育のあるべき姿に敏感です。