先週は北京の大気汚染など軽い話を書くつもりだったが、中国海軍艦船によるレーダー照射事件が飛び込んできたため、筆者の北京PM2.5「体験記」は流れてしまった。今週こそは今回北京出張で筆者が見聞きしたこと、感じたことをありのままご紹介しようと思う。
昔からあった大気汚染
今回の北京「大気汚染」は期待外れだった。到着する2日前に大風が吹き、前日には雪まで降ったため、北京の空気が意外にもクリーンだったからだ。
出発前、北京の友人からは「数値最悪、マスク必携」と脅かされ、日本の知り合いからは餞別にマスクを1箱も頂いてしまった。
ところが、空港に着いてみると話が全く違う。曇ってはいたが視界はすこぶる良好。右の写真は到着時にiPhoneサイトが示した北京のPM2.5指数で、上段が米国大使館発表、下段が中国政府発表の数値だが、米側発表でもPM2.5は165(unhealthy不健康)しかなかった。
もちろん165は決して正常な数値ではない。しかし、このPM2.5指数、実は東京でも入手できる。Beijing Air Pollution: Real Time Air Quality Index(AQI)を見ると、2月13日23時現在、北京AQIはPM2.5が何と422(hazardous有害)だ。やっぱりそうなのか。
422とはこれまでの最高値であり、恐ろしく悪い数字だ。残念、今回北京ではこんな汚染された空気を胸一杯吸ってみたかったのに。しかし、よく考えてみたら、筆者が中国の日本大使館に赴任した2000年秋、北京の空気がかなり汚染されていたことを思い出した。
当時既に北京の大気汚染は深刻で、小さい子供がいる家庭は郊外に住むよう忠告された。その後街中に便利なマンションが建つようになり、北京オリンピック開催に合わせ多くの工場も市内から出ていったので、人々は北京の大気汚染のことを忘れてしまったのだろう。
実際にPM2.5数値は一時かなり改善したが、最近の自動車の急増に伴い再び急速に悪化し始めたらしい。北京に住む外国人社会では静かなパニックが起きているとも聞いた。子供の小さい家庭では、頻繁に休みを取って子供たちを連れて北京を脱出するのだそうだ。
儲からなくなった北京のローファーム
だが、外国人が中国を脱出する理由は何も大気汚染だけではないらしい。リーマン・ショック以降、一時は我が世の春を謳歌していた北京の外資系弁護士事務所にも閑古鳥が鳴き始めたのだそうだ。特に、最近は大半の外国系ローファームが赤字を出しているとも聞いた。
理由は様々だ。1つは米国のロースクールを出た中国人弁護士が増えたこと。中国人クライアントは当然中国人の弁護士を好む。以前のように外国人弁護士がビジネスを仕切る時代はそろそろ終わりつつあるらしい。