米パソコン大手、デルの創業者らによるMBO(経営陣が参加する買収)に米マイクロソフト(MS)が20億ドルを融資するというニュースが話題を呼んでいる。
デルは5日、創業者であるマイケル・デル最高経営責任者(CEO)と投資ファンドなどによる買収提案を受け入れたと発表した。これにより同社を非公開会社にし、株主や株価動向などに左右されない、迅速な意思決定が行える企業に変わるというのがデルの説明だ。
MSとデルの蜜月関係が他社に影響を及ぼす
デルでは買収完了後もデル氏がCEO兼会長として経営の指揮を執り、長期的な戦略で顧客に最良の製品やサービスを提供していくとしているのだが、その買収資金の一部としてマイクロソフトが20億ドルを融資するというわけだ。
これは出資ではなく、マイクロソフトは新生デルの経営に関わるわけでもない。しかしこうしたデルとの蜜月関係が、マイクロソフトのほかのパソコンメーカーとの関係を悪化させるのではないかと懸念が広がっている。
マイクロソフトは同日声明を出し、デルへの融資の理由を「パソコンのエコシステム(生態系)全体の長期的な成功のため。当社のプラットフォーム上に構築される製品やサービスの技術革新を支援していく取り組みを今後も続ける」と説明した。
一方デルのライバルである米ヒューレット・パッカード(HP)も声明を出し、「デルは膨大な借金を抱え、前途は多難。今後新製品、サービスに対する投資が制限され、顧客は別の方策を探すことになる。我々はこの機会を最大限に活かす」と敵意をあらわにした。
ただ、今回の融資はマイクロソフトの常套手段と、同社が今置かれているパソコン市場の環境の変化によるものという見方もある。
例えば、同社は電子書籍端末の特許を巡って争っていた米書店チェーンのバーンズ&ノーブル(B&N)と和解し、3億ドルを出資した。ネット検索の分野では米ヤフーを資金面で支援し、自社の検索エンジン「ビング(Bing)」の事業強化を図った。